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旅先でエロティックな本――犬山紙子「モテ読書」

旅先でエロティックな本――犬山紙子「モテ読書」

2015/11/07
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 新刊が出たお祝いに伊豆に一泊してきました。温泉地で原稿を書くのが作家っぽくて憧れていたので、やってみたのですが、スマホのWord でポチポチと文章を打つ作業にロマンもへったくれもなく断念(そもそも私の書く内容にロマンがないけども)。酒を片手に本を読みながらゴロゴロしておりました。それにしても、旅先に持っていく本っていつも悩んでしまいます。小説も良いのだけど、旅先であることを忘れて没頭してしまい、読み終えたあとにあたりが暗くなってて妙に寂しくなるんですよね。短くちょこちょこ気分で読める短編集なんか良いよねえとか思いつつ短編集って当たり外れ大きいしなあとか。で、結局犬山が今回持っていったのは『世界史A』 (おもしろコラム付き)……。星空が綺麗なところなので、古代のロマンに思いを馳せるにもってこい、ついでに勉強したろ、ってな感じですが酒飲みながら読んだのでもちろん内容を覚えているわけもなく、ベランダで読んだので蚊にいっぱい刺された思い出と共に東京に戻ってまいりました。

 帰ってきてから友人たちに旅先にはどんな本を持っていくのか聞いてみることに。「食事のエッセイ持って行って食へのモチベーションを高める」「ちょうどその時読んでる本をそのまま」「iPad にキンドル入れてあるから旅先で気分に合わせて買う」「お気に入りの名作を何度でも」「旅先の土地が舞台になっている小説」「読み終わって捨ててもいい本か、薄い本」「旅で本は読まない」など色々ありましたが、黒髪美女Iさん(34)の「とにかくエロティックな本」というのがグッときまして。その答えを聞いた瞬間、温泉で濡れた髪を束ねしっとりと浴衣を着こなし(もちろん胸元は空き気味) カラカラと氷が鳴るウイスキー片手に本を読む眼鏡姿のIさんが脳裏に浮かびまして。あっ! ししおどしの「カッポーン」まで聞こえてきたぞ、こりゃあ良い。なんかモテそうでもある。

 旅というのは日々の生活を忘れ、人間の欲やら煩悩やらがむき出しになるタイミング、色っぽい本というのは理にかなっているのでしょう。仕事ばっかりの毎日で男性ホルモンばっかり刺激され、とんと色気なんてものがなくなっていた犬山、思春期や暇なニート時代に培(つちか)ったスケベ妄想力も過去の話でどこか寂しかった。あの頃は何もなくても妄想だけで毎日楽しめたし。旅で色っぽい妄想力を再度鍛えるのは良いアイディアかもしれない。

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 てなわけで次はフランス書院文庫を……ではなく、もうちょっと妄想の余地が残ってる本でも片手に旅へゆこうかと。

旅先でエロティックな本――犬山紙子「モテ読書」

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