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二桁勝利への課題

 当時は、いいピッチャーだなと思う反面、気がかりな面もあった。

 今はそれを克服し、そこでも勝負ができるようになったので言わせてもらうが、移籍当初は右打者のインコースが得意ではなかった。

 右打者を攻める際はほぼ外のストレートとカットとスライダー。シンカーはまだ投げきれない投手だった。それでも2018年シーズンのほぼ後半戦だけで5勝し、周りも私が日頃から言い続けている『二桁勝利』を疑う人は少なくなっていた。

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 だが、やはり先発投手でインコースに投げきれないのは致命的。手足の長い外国人や、強打者にはわかっていてもパワーピッチング(力でねじ伏せるような投球)をしなければいけない場面が必ずくる、平良をはじめ若い投手には口が酸っぱくなるほど伝えてきた。

 かわすピッチングだけでは限界がある。何故かと言うと、誘い球(ストライクからボールになる変化球で空振り、又は打ち損じを狙う)に相手打者が反応してくれれば絶大な効力があるが、反応しなければボール球となりカウントが不利になる。カウントが不利になればストレートは行きにくいのでまた変化球、ストレートを要求したいがカウントに負けてどんどん悪循環になり、ストライクを取りに行ったボールを痛打される。もしくは中盤の相手打者の目が慣れる2、3打席目でつかまるというケースが2018年、2019年シーズンでは目立っていた。

進化した2020シーズン

 今年の平良はもはやベイスターズには欠かせない投手になったのは言うまでも無いが、何が良くなったのか。

 1つ目は、『前年までの経験』

 目の前の打者を抑えるのに精一杯だった前年までと比べ、メンタル的にも余裕が生まれ、力の強弱をコントロールできるようになったのが、安定した投球につながっているのではと私は思う。

 2つ目は、『課題の克服』

 前述したとおり、前年までの平良の課題は右打者のインコースだったが、今では外国人や強打者にも勝負球で投げるなど、徐々に課題を克服し、今までのスタイルから新しいスタイルを取得したのが大きな要因ではないだろうか。

 3つ目は、『捕手戸柱の存在』

 ここ数年2軍生活が長かった戸柱恭孝は、どん欲に野球を求め、配球や考え方を勉強し、いつかまた正捕手に返り咲く事を胸に誓い、たゆまぬ努力をしているのを私は見てきた。

 そんな戸柱から出されるサインには、並々ならぬ熱い想いと、経験から裏付けられたものが迷いのないリードに繋がり、平良も自信をもって投げていることが好投の要因なのは結果が物語っている。

ベイスターズに欠かせない投手になった平良 ©時事通信社

現実味を帯びた『二桁勝利』

 今シーズン、私の中で最も見ていて興奮した投球は、6月28日阪神戦のサンズ選手に投げた外シンカー。結果は見逃し三振。そんなおしゃれなピッチングができるやつが日本にいるのかと、1人で興奮していました。

 後は、7月26日広島戦の鈴木誠也選手をインコースのシンカーで三振に打ち取ったシーン。お見事としか言えません。

 現時点(8月4日)で2勝2敗、防御率1.99。投げた試合全てでQSを達成しているのは12球団で平良1人。

 まだまだ発展途上の平良がどこまで成長し、ベイスターズを優勝へと導くのか。

 これからも目が離せないと同時に、選手の皆が大きな怪我無く、1年間戦ってくれることを切に願う。

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