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ヤクルトの新人広報・三輪正義が考える“バイプレーヤー”宮本丈がプロで生き残るために必要なこと

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/19

 東京ヤクルトスワローズ広報部の三輪正義です。毎日暑い日が続きますが、体調等お変わりありませんか? 僕は温度計をグラウンドに置くと液晶が真っ白になって消えてしまう真夏の戸田球場で鍛えられたおかげで、この猛暑も逆に涼しく感じるほど。毎日ランニングなどをして鍛えていますが、球場に観戦に来るみなさんは熱中症等、充分に気をつけてくださいね。

 さて、お盆休みも終わりましたが、皆さんどう過ごされましたか? 

 僕にとっては「人生初のお盆休み」、これは物心ついたときから、ずうっと野球をやってきた“プロ野球選手あるある”なんですが、お盆休みに海やプールで遊んだ記憶がありません。

 

 現役を引退し、今年サラリーマンとなった僕は「人生初のお盆休み」を楽しみにしていました。「海へ! 山へ! あぁ、どうしようか……」と思い悩んでいたのですが、新型コロナウイルス感染が一向に収束せず。ウキウキ夏ライフは泣く泣く封印、読書などをして静かに過ごしました。運動神経バツグンを自負している僕ですが、実はカナヅチなんです。人生で一度も海水浴に行ったことがなく、潮干狩り止まりなのはここだけの話です。

主力の不調を埋めたバイ・プレーヤー宮本丈

 前回のコラムの掲載時、スワローズは首位で、その原動力となった若手選手のことを書きましたが、あれから1か月——チームは連敗が続き、4位へと転落してしまいました。主力のケガや好調だった選手が相次いで不調に陥り、チームは「夏バテ」状態に。

 そんななかバイ・プレーヤー、3年目の内野手・宮本丈(たけし)が力をつけてきており、苦しいチームのピースになっています。

 山田哲人が抜けたセカンドの先発として抜擢されると、いきなりプロ初ホームラン(7月28日、3ラン)。8月7日のベイスターズ戦では2安打3打点と気を吐いて、「山田さんの穴を埋めるのは厳しいかもしれないけど、勝利に貢献できるようにという気持ちでやっています」と同じ履正社出身の先輩を立てる殊勝なコメント、僕の後継者として“満点の回答”です。

 宮本と言えば、戸田で一緒にプレーしているとき、日隈ジュリアス投手が僕のところに走ってきて、「三輪さん! 丈さんが空を見ながら、エヘヘ~と笑ってます」と目を丸くして報告してくるので、暑さでどうかしたのかと心配しつつ、宮本に聞くと「いや、思い出し笑いをしていただけです~」と答える男です。

 また、ファームの横須賀スタジアムで2ベースを打ったときは、森岡良介1塁ベースコーチから、「打球判断に気をつけるように」と注意を与えられると、「僕、初めて2ベース打ちました~」と返事をする男。上田剛史からも「宇宙人」と呼ばれる、ひとかどの人物なんです。

7月28日の阪神戦でプロ初本塁打を放った宮本丈

 そんな宮本からはたまにLINEがきます。彼はチームの中でもトップクラスのバントの技術の持ち主ですが、「こんなときどうやってバントしたらいいですか?」など技術面のことをいろいろ聞いてきます。そして、試合でバントを決めたときも「見てくれました?」とまた連絡がくる。「見てねーよ!」とあえて突き放すと、わざわざ動画を貼り付けてきて「どうですか?」と聞いてくる。

 僕が現役中、自主トレをしているときも「ちょっと守備を見てください」と聞いてきてくれました。そのとき、僕はもう「現役でいられるのもそんなに長くないだろう」と思っていたので、こんな僕の話でも後輩の参考になるのならと、経験から培った技術論や精神論を話したのを覚えています。

 僕がずっとマシン相手にバント練習をしていたのを見ていただろうし、同じようなポジションで、同じようなプレースタイルだと感じ取ったのかも知れません。それがきっかけで、宮本には自分の経験や感じたことを少しずつ話すようになりました。