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ヤクルトの新人広報・三輪正義が考える“バイプレーヤー”宮本丈がプロで生き残るために必要なこと

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/19
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バントは技術力よりも精神力

 宮本も期待されているバントというのは、技術ももちろんですが、精神力がいる仕事です。僕はピンチバンターでの起用も多かったのでわかりますが、バントというのは「決めて当然」と思われている仕事です。しかし、相手ピッチャーは是が非でもさせたくないと、クイックなどを駆使して投げてくる。

 マシン相手のバント練習を何万本としようが、実戦は全く違うものなんです。若手で控えが多い選手なら「一度の失敗」で精神的に参ってしまい、技術や他のプレーにも影響が出ることがあるんです。この僕ですら毎回、ベンチ裏で代打の準備をしていたときは、オエオエとえずきが止まらなかったほどですから。

 宮本にも言いましたが、結果、走者が次の塁に進めば、「顔面にボールが当たって死んでもいい」。それぐらいの気持ちでやらないとバントは成功しない、といつも思いながら僕は打席に向かっていました。

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 そして成功しても、明日また成功する保証はない。バントを決め、ベンチに戻るとみんなにハイタッチで迎えられる。そしてすぐにベンチ裏に行く。すっと座って手袋を外した瞬間、達成感はもう消えていて、「また練習しないと明日はない」と不安に苛まれていました。だから1軍の試合で使ってもらえるようになった宮本には、「自分はプロで何をすべきで、どうやって生き残っていくか」を一生懸命考えていってほしいと思います。

 「宮本」と「バント」で思い出しましたが、当時ヘッドコーチだった宮本慎也さんから「お前のバントだけは認めてやる」と言われたことがあります。あの生涯犠打408個、シーズン67犠打のNPB記録を持った、バントの名人から「お前、たいしたもんだよ」とお褒めの言葉を頂戴したのは、プロ野球選手になって3本の指に入る喜びのひとつです。

 宮本慎也さんからはさらに「俺は右打ちで、左打者にバントを教えられないから、お前が左の奴らに教えてやってくれ」とまで言われました。そこに打撃コーチだった石井琢朗さん(生涯犠打289個)もやってきて、いろいろな技術の話ができたのは現役時代の大切な財産です。

 さて、お盆明けの僕の仕事ですが、もう球団公式ホームページでお知らせしている通り、公式アプリで「選手に聞いてミルミル~三輪広報が突撃」という新しい動画の企画が始まりました。僕が企画し、つば九郎が“なにかと”協力してくれた渾身の企画です。

 実を言うとこれは僕の地元・下関の大先輩で現・某球団の投手コーチをされている方が、長年テレビ番組でされていた「プロ野球熱ケツ情報」というコーナーをパク……いやオマージュを捧げた企画です。

 地元に2つあった工業高校のライバル校同士の出身ということで、現役時代は球団の垣根を越えて、なにかと目をかけてくれた尊敬する大先輩にリスペクトを込めた企画だということは、ここに強調しておきます。

 僕も大先輩よろしく、アポなしで現場を訪問。ファンの皆さんからいただいた質問を選手に「忖度なく」ぶつけていくというものです。元選手として行くのか、広報として、先輩として、はたまた友達として聞くのか……非常に立ち位置に悩む突撃ですが、選手たちの本音を引き出せる、稀有な僕の立場をフルに活かしたいと思っています。

 宮本丈にはさっそく出演してもらって、LINEでは詳しく伝えることができなかったバント論など、実践を交えてできたらなぁ、とも思っています。公式Twitterで募集していた質問の第1弾は締め切ってしまいましたが、第2弾、3弾と続いていきますので、普段は聞けない質問をどしどしお待ちしております。

 あ、僕も聞きたいことがありました。新人・吉田大喜投手のプロ入り初勝利のとき、同時にお立ち台に上がった古賀優大捕手へ。

古賀優大(左)と吉田大喜

「なぜ、キャッチャーマスクをかぶったまま、お立ち台に上がったのですか?」

 皆さんはどう思われましたか?

◆ ◆ ◆

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