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「腐らずに、楽しむ」もがき続けたホークス・真砂勇介が大事にしていること

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/28

悔しい経験を乗り越えてきたからこそ得た強さ

「プロ生活はずっと悔しいですよ」と真砂選手は振り返ります。

 昨季はウエスタン盗塁王、2016年オフにはU-23野球ワールドカップで侍ジャパンの4番として大会MVPを獲得しましたが、「そんなん意味ないっすよ」と気にも留めません。

 それでも、あの日のことは違います。

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「もちろん覚えてますよ。嬉しかった」

 そう振り返るのは、2017年8月3日。京セラドームでプロ初安打となる本塁打を放ち、初めて1軍で勝利に貢献した日のことです。

「この一瞬の喜びのためにやっている。9割はしんどいですよ。でも、この1割の喜びを得るためにやっているんです」

 そう話す真砂選手の表情は決して苦しい顔ではありませんでした。しんどいことも含めて大好きな野球。清々しい表情で語ってくれました。

プロ初本塁打の時の写真は自宅に飾っているそうです

 好調を維持してきた中で、長谷川勇也選手の濃厚接触者として2週間自宅待機となった期間もありました。自宅で出来ることは限られていましたが、とにかく体力を落とさないように意識して過ごしてきたそうです。そして、復帰戦となった8月15日、ウエスタン・広島戦。1番センターでスタメン出場すると、先頭打者本塁打を放ちました。

 小川(一夫)2軍監督も「真砂はバッティングの状態もいい。センター中心に打っているし、苦手の内角も打てているし、身体もしっかりしている」と頷きます。ただ、8年目の外野手に求めるものは当然高いです。1軍に上がれるレベルではなく、1軍で通用するプレーヤーとして送り出すのだという監督の思いも感じました。

 真砂選手は現状について「少ないチャンスだと思う。今の数字じゃ全然物足りないし、もっと圧倒的な数字を残さないと声は掛からない」と選手層の厚いホークスで戦い抜く覚悟を見せていました。その現状に悲観することなく、むしろ「ホークスだからこそもっと上を目指せるのかなと思います」と向上心さえ見せました。

 そう話していたところで、突然巡ってきたチャンス。26日に今季初の1軍昇格を果たしました。悔しい経験を乗り越えてきたからこそ得た強さが真砂選手にはあります。“エンジョイベースボール”で心身ともに進化し続ける真砂選手が、1軍の舞台で大きな花を咲かせる日を心待ちにしています。

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