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AKB卒業生の勝ち組? 松井玲奈29歳に 独立して5年、“地味な成功”続ける仕事術とは

『エール』『浦安鉄筋家族』『行列の女神』……

2020/07/27
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『タモリ倶楽部』『JTB時刻表』そして小説……好きなことを仕事に

 SKE48時代から多趣味で知られる。名古屋の「リニア・鉄道館」を建設中に新聞の企画で取材したのをきっかけに鉄道に魅せられ、その後、『JTB時刻表』の表紙や『タモリ倶楽部』の鉄道企画などにも登場するようになった。本も子供のころからよく読んでいたが、17歳で芸能界に入って読書する時間がなくなってしまう。そんなころ、書籍・雑貨店のヴィレッジヴァンガードで、天体コーナーに島本理生の小説『よだかの片想い』が置かれているのを見つける。どこか場違いに思えて手にしたのだが、気づいたら買っていた。その本を読んですっかり島本作品のとりこになり、これを機にまた本を読み始めたという(※5)。

 文章を書くのも好きで、書評やエッセイを書く機会も多い。『文藝春秋』2019年7月号には、「おばあちゃんのほおずき」と題して、郷愁漂うエッセイを寄稿している。小説を書くきっかけは、ファンクラブの会報誌にショートショートを発表したことだ。これが『小説すばる』の編集者の目に止まり、短編小説を依頼される。第1作「拭っても、拭っても」をはじめ同誌に発表した3作に、書き下ろしを加えてまとめたのが、冒頭にあげた『カモフラージュ』である。刊行時、この書名に決めた理由について訊かれ、《どの作品にも共通するのが、誰でも何かに対して装っているというか、カモフラージュしている部分があるんじゃないか、ということではないかと。その化けの皮がはがれたところを書きたかったんだなと後で気づきました》と答えている(※6)。人々の前で装うことを仕事とする彼女ならではの発想というべきか

 アイドル時代から芯のしっかりした人という印象がずっとあるのだが、新たな出演作や文章に触れるたびに、こんな一面もあったのかと驚かされる。役者として成長を続ける彼女が、これからどんなふうに大化けするのか、今後も目が離せない。

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©文藝春秋

※1 『FLASH』2013年4月30日増刊号
※2 「まんたんウェブ」2020年6月7日配信
※3 「AERA dot.」2020年5月11日配信
※4 『週刊朝日』2019年1月18日号
※5 『Voice』2018年9月号
※6 『青春と読書』2019年5月号

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