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香港に下された“死刑判決” 習近平の次なる狙い「台湾併合」も実現してしまうのか

香港に下された“死刑判決” 習近平の次なる狙い「台湾併合」も実現してしまうのか

2028年までに統一を狙う可能性が高い

2020/07/30
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 7月12日、香港の民主派が実施した香港立法会(議会)選挙に向けた予備選挙が終わった。これは今年9月の香港立法会選で候補者が乱立し、民主派が共倒れする事態を避けるのを目的としたもので、投票者数は主催者目標17万人の3倍を超える約61万人に達した。

 ここまで多数の投票者が集まったのは、習近平が6月30日に公布した「香港国家安全維持法」への反発が高まっているからにほかならない。

 同法の成立により、香港で国家の分裂を図ったり、外国勢力と結託したと中国政府が判断した人物に法執行ができるようになった。香港の法律より優先されることも明記されたことで、デモ参加者や民主活動家らが中国の基準で裁かれ、SNSや報道も、中国並みに締め付けられることが決定的となったのだ。

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在任中に統一を目指す習近平

 その後の中国共産党の動きは速かった。翌7月1日には、抗議デモの現場で「香港独立」の旗などを所持していた男女10人を、香港国家安全維持法に違反した疑いで逮捕。この日のうちに合計で370人を逮捕するなど、同法を厳しく運用していく姿勢を明らかにしたのだ。

国賓訪日の中止を求める声も

 アヘン戦争後、イギリスの植民地となった香港は、1997年に中国に返還された。返還から50年間は、資本主義制度など、中国本土とは異なる制度を維持する「一国二制度」が約束され、外交と国防を除く「高度な自治」が認められていた。

 香港で捕まった容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」改正案をはじめ、昨年来、中国共産党は一国二制度をないがしろにする動きを強めていたが、香港国家安全維持法によって、中国政府は、一国二制度に「死刑判決」を下した、と言っていいだろう。

 こうした中国の姿勢を受け、7月7日、自民党政調審議会は香港国家安全維持法に対する非難決議を了承し、習近平の国賓訪日について、「党外交部会・外交調査会として中止を要請せざるを得ない」と表明した。

「空母キラー」東風21D

 また、アメリカ大統領のドナルド・トランプも、香港向けの警察の装備などの輸出を規制する措置を発表。さらに、フェイスブック(FB)、グーグル、ツイッターの米IT大手3社が、香港当局への利用者情報の提供を一時停止し、IT分野における米中の「デカップリング(切り離し)」も加速することとなった。習近平の強硬な姿勢に対しては世界中から非難の声が上がっているのだ。

今日の香港、明日の台湾

 習近平による「自由」を奪う動きは、香港だけにとどまらない。習が虎視眈々と狙う次のターゲットは台湾である。