同年放送の『ウルトラマンレオ』の主題歌の歌詞(作詞は阿久悠!)にも「何かの予言があたる時 何かが終りを告げる時」との一節があり、『ノストラダムスの大予言』の影響下にあることは明白だろう。
また、巨大ロボットアニメの雄『マジンガーZ』(’72~’74年)にもノストラダムスは活きている。『マジンガーZ』の劇場映画第2作『マジンガーZ対暗黒大将軍』(’74年)には、謎の予言者が登場する。銀の長髪に老人の顔、白いひげを蓄え、茶色い装束に身を包み、木の杖を手にした、見るからに怪し気なその人物は、のっけから「まもなくこの世の終わりが来る……」と主人公の兜甲児らに予言した。なんのことはない、その人物こそ、 死んだと思われていた甲児の実の父親・兜剣造博士で、新たな敵・ミケーネ帝国の出現を暗に伝えていたのだ。甲児が操縦するマジンガーZが大ピンチと見るや、すかさず自身が開発したマジンガー2号機 = グレートマジンガーを出撃させるという用意周到さで、子供達は救世主グレートマジンガーのかっこよさにシビれたものだった。
驚いたのは、「お前は弾丸となって空を飛ぶだろう」という予言。ギャグ担当キャラのボスボロットが、マジンガーZを助けるため、両足にミサイルをくっ付けて空を飛び、ピンチに駆けつけるシーンを言い当てたものだが、この急場凌ぎの現場の苦肉の策までなぜわかったのだろう? これこそ驚異の予言、と、子供心にびっくりしたものだ(普通、そんなことまで読めないでしょ?)。
藤子・F・不二雄と水木しげるが描いた『大予言』2編
漫画の世界にもノストラダムスは多大なる影響を及ぼした。『ドラえもん』(’69年~)で有名な藤子・F・不二雄が’76年に「S-Fマガジン」(早川書房)5月号で発表した作品がズバリ『大予言』!
その主人公の名前がノストルタンマで、最近、師匠で高名な占い師の田呂都先生がすっかり表舞台に登場しなくなり、ひとり塞ぎ込んでいる。きっととんでもない未来が見えたに違いない……と思ったタンマが、田呂都先生を訪ねると、ポンと投げ出されたのが最近の新聞や週刊誌の記事を切り抜いたスクラップブック。
「これが何か?」という表情を浮かべたタンマのリアクションに先生はひどく脅える。曰く、“ごく普通に新聞や週刊誌に[人類滅亡]と掲載される日常に誰も恐怖しない。その事自体が恐い”と。それに慣れっこになっている人々を田呂都先生は恐れ、最後に孫を抱き「おまえにはもう予知してあげる未来もないんだよ」と吐いて幕を閉じる。“真に恐いのは、民衆の鈍感さと無関心”という真理を痛烈な風刺と皮肉たっぷりに描いたこの作品は、数ある藤子・F・不二雄のSF短編中でも、傑作中の傑作に数えられることだろう。
『ゲゲゲの鬼太郎』(’65年~)で有名な水木しげるも後年、ノストラダムスを題材にした作品を発表している。’93~94年に描き下ろした『悪魔くん ノストラダムス大予言』(初出・辰巳出版/現在は講談社「水木しげる漫画大全集」に所収)という作品で、水木作品の人気キャラ・悪魔くんが、悪魔メフィストの力でノストラダムスの時代にタイムスリップ。その予言を直接聞き、1999年の人類の滅亡を防ぐために活躍する……という内容で、『ノストラダムスの大予言』の内容を分かりやすく解説しており、ある意味、映画以上に原本寄りの構成となっていた。五島先生もこの作品はいたく気に入られており、生前、絶賛されていた。
以降も、真田広之・織田あきら主演のSF特撮ドラマ『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』(’78年)第25話に“ダム・ノストラの予言”が登場したり、『仮面ライダースーパー1』(’80年)第18話にヤッタラダマスという怪人が登場したり、『ルパン三世』シリーズの映画第5作で『くたばれ! ノストラダムス』(’95年)が公開されたり、「週刊少年マガジン」(講談社)の人気シリーズ『MMR マガジンミステリー調査班』(’90~’99年)でも大々的に採り上げられたりと、その後継は跡を絶たなかったが、当の1999年、地球に恐怖の大王・アンゴルモア(このネーミングがまた“いかにも”で秀逸!)が出現しなかったことで、一旦は終息する。
大予言はつづくよ どこまでも……
だが、五島さんは生前、「ノストラダムスの大予言は多少、時期がずれた」とも語られていたそうで、そうなると2000年以降にも日本や世界を襲った数々の大事件に思いが及び……やはり一生、五島勉とノストラダムスの影響からは逃れられない、自身の性(さが)を痛感してしまう次第。
五島先生、恐怖の大王の脅威が及ばない世界で、ひと足お先にゆっくりとお休みください。