昭和42年生まれの筆者にとっては終生忘れられないキーワードのひとつ、『ノストラダムスの大予言』の作者、五島勉さんが去る6月16日に亡くなっていた。享年90。死因は誤嚥性肺炎だった。

五島勉さん。© 文藝春秋

 16世紀のフランスの医師・占星術師のミシェル・ノストラダムスの四行詩と散文体の序文から成る百詩篇集(ミシェル・ノストラダムス師の予言集)を「諸世紀」として紹介し、解説したこの本は、1973年11月25日に祥伝社より刊行されるや一大ベストセラーとなった。わずか3か月で約100万部(あくまでも公称)売れたというのだから、出版不況の今となっては夢のような話だ。

五島勉さんによる『ノストラダムスの大予言』。1973年刊行。

1974年、日本は猫も杓子もノストラダムスだった

 本書は“ノンフィクション”の表記は特になく、五島さんによる小説、あるいはフェイクドキュメンタリー的側面を有していたが、発表当時はかなりのリアリティを伴って一大センセーショナルを巻き起こした。“世紀末”、“終末”という言葉を普遍化させたのもこの作品だろう。翌’74年、早くも東宝系にて映画化・公開された。

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 それには追い風があって、’73年12月29日に同じ東宝系で公開された小松左京原作の『日本沈没』が大ヒットを記録し、ちょうどその後継を探していた矢先だった。さすがに沈没したばかりの日本を再浮上させたり、第二の日本をでっち上げてまた沈没させる訳にもいかない。いわゆる“破滅・パニック”路線を続けたかった東宝にとって、『ノストラダムスの大予言』の大ヒットは渡りに船だった。間髪入れず映画が公開されたこともあり、『ノストラダムスの大予言』と“世紀末ブーム”は過熱した。

1973年に公開された『日本沈没』のBlu-ray版。一方『ノストラダムスの大予言』は一度も映像ソフト化されていない。

 子供の頃に、この本を読んだり、この本の特集や転載記事、あるいはテレビ・ワイドショーのネタ、そして映画などを観て、トラウマになった方々も多い……というか筆者もそのひとりな訳でして。

 ここではその大ブームぶりを、同時代に『ノストラダムスの大予言』に影響を受けた作品群の幾つかをご紹介することで、検証してみよう。

映画『ノストラダムスの大予言』の衝撃の内容

 まずは先述の本書の映画化から。公開は’74年の8月3日というから、じつに発売後、わずか9か月で公開まで至っているのがすごい。併映は『ルパン三世』の初の実写映画化作品『ルパン三世 念力珍作戦』で、こちらも微妙にオカルト題材合わせなのが面白い。