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「幸せが怖い」というのは、幸せなときこそリスクに対する備えを怠ることがないようにという、生存戦略としてまことに堅実なマインドセットです。きっと能力の高い、優秀な方なのではないでしょうか。あなたはそうやって長く生き延び、長期に亘って社会に貢献していく立場を保ち続けていただきたいです。

 おそらく「結婚しない」というのも、なるべく不確定要因を増やさないようにという戦略の表れ。「抜擢されそうになると断る」というのも、集団内で目立つと無用な攻撃を受けかねないからあらかじめそれは避けておこうというリスク管理の一環。もう非の打ちどころがない完璧な戦略です。

 そんな完璧な生き方は寂しいのではないかと誰かに指摘されることがあるかもしれませんが、それは単なる社会的刷り込みである可能性も高いので、特に気にならなければ放置しておいていいでしょう。

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 ただ、もしかしたらあなた自身にもそうした感情が生れることがあるかもしれません。その感情はかつて人間が誰かと一緒にいなければ敵に立ち向かうことも子どもを残すこともできなかった時代の残り火です。

 もはやほかの動物に捕食される心配はなく、生殖医療も日進月歩の時代ですから、子どもは精子さえあれば相手がいなくても作ることができる。子育てインフラも場所を選び、経済的に余裕があればそれなりに整えられる。寂しいというのは社会的刷り込みまたはやっかみ、ないしは古代の感情が残っているにすぎないのであって、あなたの生き方を寂しく思う必要などまったくありません。

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text:Atsuko Komine

週刊文春WOMAN vol.2 (2019GW号)

 

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2019年4月26日 発売