コロナ禍は緊急事態宣言解除で終息を迎えるどころか、ここにきてさらに感染拡大の様相をみせている。政府が繰り出す対策は、後手に回り、疲弊する宿泊・観光業を救済しようと立ち上げたGo Toキャンペーンもそのネーミングの上から目線さと、打ち出したタイミングの悪さもあいまって散々な評価に陥っている。

 あてにならない国や自治体の政策、いっこうに先が見えない閉塞感などから人々は自衛に走り始めている。当初コロナ禍は全く得体のしれない感染症であり、恐怖にさらされた人々は、ひたすら自宅に引き籠った。その結果、飲食店や物販店などが苦境に立たされ、国内外の顧客を失った宿泊業などを中心に倒産が出始めている。

会社員の“東京脱出”が始まった

 こうした状況下、労働人口の多くを占める勤労者、いわゆるサラリーマンを中心に東京から脱出しようという機運が高まっている。彼らの多くは緊急事態宣言中、自宅でのテレワークを余儀なくされたが、この全国一斉テレワークお試しキャンペーンは政府のGo Toよりもはるかに国民の間で定着してしまった感がある。というのも、宣言解除後も多くの企業がテレワークを継続しており、その流れは最近の感染拡大を受け、より確固たるものになっているからだ。

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JR常磐線 ©iStock.com

 勤労者の側もこの動きはむしろ歓迎のようだ。毎朝毎夕の通勤という行為がいかに苦行であったかに気づいただけでなく、毎晩上司や取引先などと夜の街を徘徊する習慣が健康に悪く、生産性も少ないことを自覚したのだ。

 通勤が週に1、2回、あるいは月に2、3回程度になった企業も多くなり、どうやらこの状態が今後も継続することが確定的になった人々の間から、東京を脱出しようとする動きが顕著になっている。

軽井沢や湘南では中古物件の問い合わせが急増

 長野県の軽井沢では、いまだかつてないほど中古別荘を購入したいという問い合わせが増えているという。神奈川県の湘南は、東日本大震災直後は津波を警戒してこのエリアから脱出する動きもあったが、ここにきて問い合わせが急増している。また、都心居住傾向が強まった結果、通勤圏外に追いやられていた横須賀や三浦半島でも、やはり中古住宅を買いたいという問い合わせが増えている。

江ノ電と江ノ島 ©iStock.com

「密」を避けて自然環境のよいところに住み、基本的には自宅ないし自宅近辺にあるコワーキング施設などで働くライフスタイルになれば、これまでのように一生分の給料債権を担保にして、都心のマンションを買うような行為をせずともすむ。住宅にはあまりお金をかけずにすむ場所、街を選ぶ。日本人の住宅選びもようやく「会社ファースト」から「生活ファースト」に進化しそうだ。

 そうした観点から住む場所を選ぶとしたら、軽井沢や湘南、三浦などに人々の目が向くのはよくわかる。だが、これらのエリアは地価がかつてよりも下がったとはいえ、それなりの水準にある。もっと手ごろで生活環境の良いエリアはないだろうか。