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2020/08/07

冬と夏だけど……“再ブレイク”広瀬香美とTUBEの共通点

 TUBEから聴こえる夏の恋は、ひたすら欲求に素直で気楽である。「夏の数だけ恋したけど」「抱いたっていいんじゃない」「お願いしたいね」(『あー夏休み』)など、メッセージ性よりも「ノリの良さ」「快楽と消費」が俄然強めだ。真っ黒に日焼けし、派手な柄パンを穿きナンパする。ノリは軽いが、一つ一つはそれなりに真剣。だからこそ純“愛”ではなく純“情”という言葉がTUBEの歌には似合うのである。

前田亘輝(2015年撮影) ©文藝春秋

 声量と包容力に溢れた歌唱力モンスター前田亘輝が、生きる意味や愛の尊さではなく、敢えて恋の浮かれっぷりを歌う。それを聴いていると、頭が良くモテモテの先輩がナンパや恋の失敗談をしてくれて、こちらまで「いやー先輩もいろいろ頑張ってんすね!」と勇気をもらう、あの気分と似た嬉しさを感じるのだ。

 これと通ずる感覚で聴けるのが冬のラブソングの女王、いまYouTuberとして再ブレイク中の広瀬香美である。壮大なスケールの歌唱力と透き通ったハイトーンボイスで紡がれる、ささやかな日常と下世話な恋バナ。「待っていました 合格ライン」「性格良ければいい そんなの嘘だと思いませんか」(『ロマンスの神様』)など、あけすけに本音をぶちまける歌詞に自然と口角が上がるのだ。「クリスマスまでには 間に合うように 私のもとへ帰ってきてね」と歌う『DEAR...again』など、聴き返して「そうそう、クリスマス一緒じゃないとカップルの価値が半減する的な時代あったあった……」と遠い目になってしまった。カボチャをくり抜く程度のお祭りだったハロウィンがその後大躍進を遂げ、クリスマスイベントが衰退する時代が訪れるなど、あの頃誰が想像できただろうか。

ロマンスの神様(1993年)

 話を戻そう。この広瀬香美がTUBEのために書いたのが『おかげサマー』。広瀬らしい「遅刻は決定だ ヤベェー」という日常のアワアワ感や「見上げりゃブルースカイ 魂はハワイ」など、言葉遊びが最高だ。歌詞に「サンバ」がわざわざ「サンバー」と伸ばして書かれているのもいい! まさにラブソングの神同士の粋な遊びである。

浜崎、宇多田……J-POP「ラブソング」の“繊細化”

『あー夏休み』が発表された1990年は、KAN『愛は勝つ』が発売されメガヒット。翌1991年には槇原敬之の『どんなときも。』がこれまた大ヒットし、ラブソングの「ラブ」の概念が大きく変化をしていった時期でもあった。TUBEや広瀬香美という季節感のある曲とは別の流れで、人を好きになることによって得た成長、葛藤、孤独感、自分らしさの再確認といった傾向も強くなっていく。

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