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『あー夏休み』から30年 「“再ブレイク枠”広瀬香美の次はTUBEでしょ?」な2020年夏

『あー夏休み』から30年 「“再ブレイク枠”広瀬香美の次はTUBEでしょ?」な2020年夏

2020/08/07

 多くの人が「人生で最も、過酷で閉鎖的」とウンザリしているであろう今年の夏。私も、もともと夏は苦手なのに、さらにトラウマレベルで嫌いになりそう……。

 しかし、それを救ってくれたのは音楽。今年デビュー35周年を迎えるTUBEの楽曲である。特に『あー夏休み』の開放感よ……! 発売は1990年。なんと30年も前の歌だが、初めて聞いたときの衝撃は今でも鮮明に覚えている。ラジオから流れてくるノリノリのリズムに「これ好き!」と体が動いた。しかし前田亘輝がサビで高らかに叫んだ歌詞に、ビックリした。

「あー夏休み!」

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 な、夏休み!? あー夏休みって言ったの? そして思った。「ヘンな歌!」と。

今年デビュー35周年を迎えたTUBE。写真はボーカルの前田亘輝(左)とギターの春畑道哉。2001年、毎夏恒例の野外球場コンサートツアーで

じつは「Oh! SUMMER HOLIDAY」だった

 今となれば、サマーホリデーでもバケイションでもなく「あー夏休み」だからこそ、あの長期休暇のワクワクさがストレートに出る名曲となったとわかる。が、普通はカッコイイ英語を使いたくなるものだろう。前田も最初は「Oh! SUMMER HOLIDAY」と書いていたらしい。しかしプロデューサーの長戸大幸がOKを出さないため、ヤケクソで「あー夏休み」にし、他の歌詞もそれに合わせて日本風にし、それが大ヒットにつながったという。なにがどう名曲を生み出すきっかけになるか、わからないものである。

 1985年『ベストセラー・サマー』でデビューして以来、TUBEのシングル一覧を見てみると、もはや夏の連想ゲーム。初期こそ横文字が多いが、『あー夏休み』の大ヒットで「多少カッコ悪くてもゴキゲンならあり」と振り切れたのだろう。『だって夏じゃない』という念押し系、『夏を待ちきれなくて』という正統派に『夏だね』というヒネリを一切捨てたシンプル系、『恋してムーチョ』というラテン系、『-花火-』という夏の風物詩攻め、『いただきSummer』(※アルバム収録曲)というダジャレ系……。あらゆる切り口で「夏最高!」と推してきて清々しい。 

夏を待ちきれなくて(1993年)
恋してムーチョ(1994年)

「TUBEの……なんだっけな、タイトルが出てこない」

 しかも、タイトルがサビで高らかに歌える曲構成が多く、同じようなタイトルの夏ソングでも混乱しない。「シーズン・イン・ザ・サン!」「ビーチターイム!」「あー夏休み!」「ガラスのメモリーズ!」少し鼻唄を歌えば一発でどの曲か分かるこのキャッチーさは、一番おいしい場面で、お待ちかねの展開が必ず用意されている吉本新喜劇のギャグさながら。「ハイ、来たー!」とばかりに安心感と爽快感をもたらしてくれるのだ。

シーズン・イン・ザ・サン(1986年)。シングルCDの発売は1989年

 実際カラオケスナックで「TUBEの夏の歌歌いたい。なんだっけな、タイトルが出てこない」「TUBEって、ほとんど夏の歌ですからね。サビを歌ってみて下さいよ」「サマードリーム……♪」「サマードリームですね」という微笑ましいシーンに遭遇したことがある。