高齢者の「終の棲家」に選ばれはじめた
マンションの老朽化に伴い、区分所有者も高齢化していることで、共同体を今後も維持していくためには不都合な所有者構成となってきているのだ。
本来はマンションという共同体は区分所有者が徐々に入れ替わり、新陳代謝が行われていくことを前提としてきた。マンションは戸建て住宅を購入するまでの一時的な棲家として認識されていたこともあり、どちらかと言えば若い人たちの一次取得としての住宅という意味合いがあった。
つまり、最初にマンションを購入した人はやがてそのマンションを売却し、戸建て住宅を購入し移転をする。そのあとには若いファミリーが入り、戸建て住宅が買えるようになるまでそこのマンションで暮らすといった、「住宅すごろく」が成立していたのである。
しかし、次第にマンションという生活スタイルは、都心部のみならず郊外部あるいは地方でもすっかり定着し、マンションに永住しようとする人が多数を占めるようになってきた。そうした中で、特に老朽化マンションの中にはその区分所有者のほとんどが高齢者によって構成されるマンションが増加してきた。死ぬまでここで暮らそうという「終の棲家」に選ばれ始めたのだ。
「死ぬまで住めればよい」
一方で、親の住んでいるマンションを相続して住もうという子供もいなくなっている。少子高齢化の影響もあれば、不動産価値の減退によって相続価値を認めない子供が増えたことも原因だ。
こうした事態になればなるほど、現在の区分所有者である高齢者は「死ぬまで住めればよい」という考えを持つようになる。つまり、マンションという住宅は子供の代に引き継ぐものではなく、自分が「住みつぶせればよい」という存在になっている。
ここから生まれる発想はどうしても「自分さえ満足であればその他のことはどうでもよい」というわがままな考えにつながる。