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「ここまで無茶苦茶な法の運用をしているということは、中国側も実際に有罪か無罪かはもはやどうでもよく、目立って民主化活動をしている人物を国家安全法の最高刑である無期懲役に処して、吊し上げにすることが目的とも考えられます。いい方向に進んでいないことは確実で、今後は予想もつかない状態です」

中国は「抜き身の宝刀」を振り回し始めた

 香港警察は、周庭氏が逮捕された8月10日、民主派の香港紙・アップルデイリーの創業者である黎智英氏(71)らも国家安全法違反などの疑いで逮捕しており、民主派への取り締まりを本格化させている。こうした動きに国際社会からの反発は必至だが、香港の蹂躙は今後ますます悪化していくと高口氏は予測する。

「国家安全法施行直後は、中国当局は国家安全法を『抜かずの宝刀』として脅すためだけに用いて、実際には有名無実化するのではないかという希望的観測もありました。しかし、今回の一件でその見立ては完全に外れていたことが改めてはっきりしました。

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警察の車で連行される周庭氏(8月10日) ©AFLO

 香港の立法会(議会)の議員選挙は今年9月に予定されていましたが、新型コロナウイルスを理由に1年の投票延期が決まりました。問題は、ここからです。投票を1年延ばすということは、現在の議員の任期を1年延ばす必要がありますが、『民主派の議員の任期は延長しない』という議論が、現在中国本土で審議されているのです。与党の議員だけが任期を延長され、野党の議員が失職するなんて、とんでもないことです。しかしこんな議論が止まらずに進んでいるのが、現状なのです。

 もはや『抜かずの宝刀』どころか、『抜き身の宝刀』を理屈抜きに振り回している状態です。今後は、一段と香港への締め付けがエスカレートしていって、予測もつかないことが次々に起こっていくでしょう」

 菅義偉官房長官は8月11日の記者会見で、周庭氏らの逮捕について「状況は承知しており、香港情勢について引き続き重大な懸念を有している」と表明した。日本政府は今後どのような対応をみせるのだろうか。