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「雨傘運動が終わったあと、香港で政治の舞台に関わることの多くなっていった周庭さんですが、その活動を最も取り上げてきたのは日本のメディアです。テレビ東京では彼女を主人公にしたドキュメンタリーも作られたほど。そもそも『民主の女神』というのは日本メディア発で使われるようになった言葉でした」

 国家安全法で香港に新設された治安機関・国家安全維持公署には、広東省で農民運動を鎮圧した実績を持つ鄭雁雄氏が署長として中国本土から送られた。彼を中心とする中国当局中心の香港締め付け強化が、周庭氏逮捕につながったと、高口氏は解説する。

「香港デモの実態を知る香港当局からは、その中心人物ではない周庭さんを逮捕するという発想は出てこないでしょう。にもかかわらず彼女が捕まるということは、いわば中国側の、『目立った奴はとにかく捕まえろ』という理屈で動いているのです」

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国家安全法の施行以降、香港では緊迫した状態が続いている ©AFLO

「有罪か無罪かは、もはやどうでもいい」

 周庭氏は国家安全法施行直前の6月30日、政治団体からの脱退を表明している。それ以降の目立った活動は無かったにもかかわらず、今回の逮捕となった。彼女の身柄は今後どうなるのか。

「香港では、これまで中国当局に都合の悪い判決も出ていましたし、仮に民主運動家が何らかの事情で逮捕されても、逃亡の恐れがないと判断されれば簡単に保釈されていました。しかし、国家安全法が施行されて『何でもあり』になりました。今回の周庭さんのケースは、何が問題とされて捕まったのかも、よくわからない。

 前例もないだけに、今後の裁判が香港で行われるのか、中国本土で行われるのかも、定かではありません。通常の法律の考え方では、法律が出来る前の行動に遡って裁くことはありえませんが……」

 イギリスに滞在する民主活動家の羅冠聡氏は、Twitterに日本語で、「彼女は無罪だが、無期刑を受ける可能性がある。日本の皆様のサポートが必要です」と投稿。日本にも支援を呼びかけている。