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「拒否できる団員などいるはずがない」

 この文書には〈個人情報保護の観点から、隊員に対し、聞き取り(収集)の目的・項目を明示し同意を得るものとし、社会通念上必要と考える個人情報のみを収集することに留意する〉とあるが、先の空挺団関係者は「戒田氏の圧力の下で拒否できる団員などいるはずがない」と話す。

 この文書は戒田氏の就任(2018年3月)前だが、別の空挺団関係者はこう証言する。

「この制度が始まった当初は、中隊長などの現場レベルでチェックするという段階でとどまっていましたが、戒田氏が団長に就任してから、『すべて自分に報告しろ』となり制度がより改悪された。金銭管理表の様式は、A3用紙1枚に赤、ピンク、黄、緑、青で危険度の高い隊員を区分けするような内容になっています」

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筆者が入手した、戒田氏時代の「金銭管理(指導要領)」と題された文書

 事情を知る陸自幹部が補足する。

「貯金が100万円ない隊員については、名前をピックアップして今後の返済計画を中級幹部に作らせ、戒田氏に逐一報告させていました。そして、各隊長を呼びつけては『こいつの返済計画はどうすんだ』とねちねち指導を繰り返し、できあがった返済計画を回覧していました」

 ある空挺団員も、筆者の取材に対してこう証言した。

「結婚していない隊員は、通帳のコピーを毎月提出させられています。さらに既婚者の資産まで厳しく調べ始めたのは、戒田氏が団長に就いてから。中隊長と大隊長の姿勢が露骨に変わりました。『団体生命保険に入っていないとおかしい』という風潮も広まりました」

筆者が入手した第一空挺団の「金銭管理状況」と題された記録の一部(戒田氏就任以前のもの)。団員の手取り額や貯蓄、借金の状況が詳細に記されている

 なお、「金銭管理指導の団統一基準について」については、公文書の開示請求への対応に○印が付いているため、請求すれば誰でも閲覧できる分類の公文書になっている。

 ご紹介した文書と証言は、空挺団自体に不必要に隊員のプライバシーを侵害するパワハラ体質があるという事実とともに、戒田氏による隊員の金銭管理が存在した明らかな証拠である。

ハカイダーが「人事教育部長」にならなかった内幕

 さて、私に寄せられたご指摘の中で、「戒田氏が人事教育部長にならなかったことは事実誤認だ」とするものがあったが、この内幕についてもご説明させていただきたい。ある防衛省幹部は筆者の取材にこう語る。

「戒田氏は元々、陸自の中でもトップエリート扱いでした。そのため、第1空挺団長→東京地方協力本部長→人事教育部長という王道を歩むはずでしたが、昨年にパワハラ関連の問題を起こしたせいでそのルートは立ち消えになった。実は7月上旬には運用支援・訓練部長になる線が強まっており、人事教育部長とどちらになるか直前までわからなかったのです。そこに文春側から人事発令の1週間前に質問状がきて、さすがに記事が『確実視されている』とした人事教育部長にするわけにはいかなくなった」