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【ロッテ】今季で引退 井口資仁のすごさは死球の数にあり

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/09/01
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鈴木大地にとって忘れられないシーン

 キャプテンの鈴木大地内野手にとって忘れられないシーンがある。まだ鈴木が一軍の試合に出るようになったばかりの頃。ある試合で井口は死球を受けた。平気な顔で一塁に歩き、その後も「大丈夫だよ」と笑い、涼しげにプレーを続けた。「ああ、まったく問題ないのだなあとこちらも思ってしまっていた。でも次の日、ユニフォームに着替える井口さんの姿を見てビックリした」。死球を受けた箇所は大きなアザが出来上がり、真っ青になっていた。それでもこの日も練習から何事もなかったかのように体を動かし、活躍をした。衝撃を受けた。プロ野球選手とはこうあるべきなのだと感じた。

「プロの姿勢を教えてもらった気がします。あれからボクよりも年下の選手がたくさん入ってきて、いろいろと教えないといけない立場になった。その際に大事にしているのは井口さんに見せてもらったその背中です」

 どんなコンディションでも言い訳はせず、弱音は吐かない。自分に厳しく、とことん野球に真摯に向き合い、魂をボールにぶつけた。その姿は確かに確実に次の世代へと伝わっている。

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「記録の数字というものはある程度、長くやっていれば、ついてくるもの。それこそ、もしかしたら、もっともっといい数字を出せたかもしれないとも思う。節目の記録に到達するたびに思うのは、どちらかというと、そういう思い。特別な感慨はあまりなくて、その時はもう次に向かっていたよね。死球も同じ。ずいぶん受けたとは思うけどね」

 オールスター出場9回、日本シリーズ出場4回。メジャーでは493試合に出場し、2度の世界一も経験した飛び抜けた実績で09年にマリーンズに入団後、自身が学んだものを惜しむことなく後輩たちに託してきた。若い選手たちに少しでもヒントになればとの思いから様々なアドバイスをしたり、後押しをしてきた。井口資仁内野手は9月24日のファイターズ戦(ZOZOマリンスタジアム)を最後に21年間、戦い続けた日々に別れを告げる。痛みを堪え、耐え、勝負に打ち勝ってきた男は146個の死球を受けても立ち上がり、痛みをはねのけ栄光を掴み、重ねてきた。そんな日々に華やかに別れを告げる。もうこれからは死球を受けることはない。

井口資仁の引退ロゴ 千葉ロッテマリーンズ提供

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3971でHITボタンを押してください。

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