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ピラニアたちの夏――8月の神宮で観たジャイアンツの若者たち

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/09/03

 午後6時43分。猛暑の分だけ美しくなる、マジックアワーが暮れる頃。

 2回表、巨人の攻撃で代打・モタがコールされた時、若きドミニカンの初挑戦はあっけなく終わりを告げた――。

©伊賀大介

激辛のデビュー戦だった育成上がりのドミニカン

 1回で31球を投げ、被安打3、四死球1、奪三振1。山田哲人と村上宗隆(マジスゴい逆方向。3年目の松井秀喜を超えてるかも)に2本の完璧なホームランを喰らい、3失点。

 前日のスポーツ報知で、あすサプライズ先発!と一面を飾り、川相昌弘は「球動く 馬力ある 試合作れる」と実践派をアピり、まだ見ぬ強豪枠来たか?と、ファンに期待を抱かせたが、現実は「ホロ苦」なんてもんじゃない、激辛のデビュー戦。DAZN解説の谷繁には「直球はアバウト」「見た目だけはペドロに似てる。真似してんすかね」と、ふんわりディスられてもいた。

 事実、翌日に二軍降格を告げられアッサリGO TOよみうりランド。もう後がない27歳のナティーノ・ディプランはおそらくその夜、悔し過ぎて寝れなかっただろう。

 そして俺は、そのしょっぱい初舞台を神宮球場のスタンドから、頷きながら見ていた。

「上等じゃねえか! やられたらやりかえせ」と。

 だって、ローテ谷間に育成上がりの外国人選手が5回4失点、しかし好調の打線に助けられてなんとか涙の初勝利、なんてストーリーじゃつまらない。セドンの様に初登板でブチかまして(15奪三振! しかし初登板がピークという近藤真一感も!)ローテに割り込むか、前のめりに倒れてめちゃくちゃ泥にまみれるか。

 巨人ファンじゃなくても必読の野球漫画「江川と西本」じゃないが、このディプラン不発をほくそ笑んでいる若手ピッチャーも勿論いるだろう。いや、居ないと困る。

 今の巨人のヤング・ピラニア軍団たち(ナンノコッチャと思う方は6月30日の記事を是非!)にはそんくらい「ギラギラ」してて欲しい。監督はめちゃくちゃ厳しいが、「お前さんたち噛み付かないのか? 舌、舐めずらないのか!? 給料上げたくないのか!?」と言わんばかりに突然チャンスはやってくる。

 それは「お前、今日デビューだから」と、昼過ぎにいきなり言われるプロレスの新弟子のようだ。そこでビビってたじろぐか、気合いを入れられるかによって、人生なんて簡単に変わる。