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「このケガも何かしらの意味がある」阪神・糸原健斗は壁をどう乗り越えたか

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/09/15
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再び始まったキャプテン糸原の「存在意義」を示す戦い

 スイングで負荷のかかる野手に多い有鉤(ゆうこう)骨の骨折。過去の事例を見ても、全治2~3カ月が一般的で決して簡単に乗り越えられるケガでもない。それでも、昨年はDeNAの宮崎敏郎が約1カ月という速さで復帰。定かではないが、宮崎のケースも糸原にとって一つのモチベーションになったのかもしれない。

 コロナ禍で取材規制があるため、リハビリの過程を間近で取材することはできなかったものの、伝わってくる進捗の数々はどれも予想を大きく上回るスピード。オーバーペースで痛みが再発すれば、残りのシーズンを棒に振るリスクだってある。時には手綱を緩め、締める時はきつく。“焦らず急いで”を可能にしたのが、毎日、いや、1分1秒をともにしたリハビリ担当のトレーナー陣やファームのスタッフの存在。他にも、外部には見えない所で数々の支えがあったからこそ、ホームラン後の“第一声”に周囲への感謝を込めた。

 7日からは7試合連続でスタメン出場(14日現在)。キャプテン糸原の「存在意義」を示す戦いが、再び始まった。昨年、生き様のにじむ言葉を聞いていた。「自分にはホームラン打ったり、すごい守備をしたり、一芸がないからシーズン出続けることで安定感を見せたい。そこだけはこだわってきた。他の人が3打数1安打なら、自分は3打数2安打。もう1本打つという、そういう積み重ねで勝負してるんで」。目の前の1試合、1本の安打のために1日でも早く帰ってくる必要があった。

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 復帰の前後で、プレーヤーとしての信念は不変でも、マイナーチェンジした部分もある。リハビリの期間に続けてきた黒のストッキングを見せるクラシックスタイルを、1軍に合流してからも継続。ケガを乗り越えた日々を脳裏に刻みつけるためか、2軍スタッフへの感謝の思いを込めたのか……。“足下”には無形の力がみなぎる。本拠地での登場曲も奇数打席では岡本真夜の「TOMORROW」に変更。「涙の数だけ強くなれるよ」の歌声を背に、バッターボックスに歩を進めている。自らの進化に、この1カ月半はどんな意味をもたらしたのか。また一つ壁を乗り越えた虎のキャプテンに聞きたい事は山ほどある。

©スポーツニッポン

チャリコ遠藤(スポーツニッポン)

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