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なぜか入居者がすぐに出ていく…不動産屋だけが知っている東京「ワケあり物件」の闇

不動産にまつわる“世にも不思議な現象”

2020/09/08

genre : ライフ, 経済, 企業

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日本橋でも“出る”という噂が……

 同様に私が担当した案件に、現在のコレド日本橋がある。ここは、従前は東急百貨店日本橋店だったものを三井不動産と東急電鉄・東急不動産の東急グループが買収し、再開発したもので、現在はメリルリンチ日本証券がアンカーテナントとして入居している。

 東急百貨店の前は、この土地には白木屋というデパートがあった。白木屋は江戸三大呉服店として栄え、日本橋に大きなお店を構えていたが、1932(昭和7)年12月に火災が発生、逃げ遅れた女子店員14名が亡くなるという悲惨な事件が起こっている。その後、白木屋を傘下に収めた東急百貨店が日本橋店として建て替えるが、成績が振るわずにいたところを、我々が買収することになったのである。

コレド日本橋 ©️iStock.com

 だが、閉鎖後の百貨店に実査に入った我々が、窓のない真っ暗なフロアで歩みを進めると、歩く廻りでカサコソ音がする。正体は本当はネズミなのだろうが、我々についてくるような妙な物音に背筋が寒くなった経験がある。実は東急百貨店に商品を納入する業者の間では、ここに幽霊がいるというのはかなり有名な話だったようだ。

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「井戸は絶対に保存せよ」

 その後私は担当をはずれ、この開発は社内の開発チームにゆだねられたが、敷地内にあったお宮と井戸を保存し、何度もお祓いをしたと聞く。井戸は火事で逃げ遅れた女子店員たちが水を求めたとされ、絶対に保存せよと社内でも厳命されたらしい。

 同じような事象は他にもあり、72年に火災が発生した大阪の千日デパートや、82年に火災が発生し、多くの宿泊客が亡くなった赤坂見附のホテルニュージャパン跡地に建てられたオフィスビルなどでも、幽霊が出るといったうわさは絶えない。

©iStock.com

 私の知人はビルの警備会社を経営しているが、いわくつきの建物で勤務していると、幽霊にでくわすことがあると真顔で言う。彼は大学ラグビー部出身で、失礼ながら到底幽霊など信じるようなキャラクターではないのに、そんな彼が言うのだからなんだかもっともらしく聞こえてしまう。