集団競技で偏りが生じやすい
プロ野球選手でも同様に早生まれは少数派だ。日刊スポーツ(2019年1月17日付け「金メダリスト最多は1月生まれ 誕生月調べてみた」)の調査によると、4~6月生まれが31.3%であるのに対して1~3月生まれは18.2%と少ない。この記事によると、こうした偏りが起きるのは集団競技、チーム競技だという。11人とか9人とか、出場できる選手数に制限のある集団競技で偏りが生じやすいのだ。一方、個人競技が多い五輪の場合は、日本の金メダリストで一番多いのは1月生まれだという。
早生まれのプロ選手が少ないのは日本に限らない。オランダ・アムステルダム大学の心理学者が、科学誌ネイチャーに投稿した論文によると、1991~1992年シーズンに登録された英サッカー選手(プレミア、1~3部)2777人を誕生月で4グループに分けたところ、6~8月生まれの早生まれ選手(イギリスでは9月入学)は18.6%で、9~11月生まれは36.7%だったという。ほぼ2倍である。
内田篤人選手を発掘した「早生まれセレクション」とは
日本サッカー協会では、この問題を十分に認識している。8月20日に、サッカー元日本代表の内田篤人選手が引退を発表したが、彼は3月27日生まれという早生まれで、2003年に日本サッカー協会が実施した「早生まれセレクション」で発掘された選手とされる。
この早生まれセレクションとは何か。日本サッカー協会に訊いた。
「早生まれのプロ選手が少ない傾向にあることは認識していましたが、直接的なきっかけは、2004年のU-16アジア大会及び地区予選に出場する選手を選抜するためでした。学年でいえば中学3年生が主体になりますが、FIFAの年齢の区切りが1月1日で、高校1年の1~3月生まれも出場できる。中3の場合は中学の部活で主力になっているので、全国大会などを視察すれば、優秀な選手を見つけられます。しかし、高1の場合は、高校に入ったばかりでまだ試合に出ていない可能性があるため、広く選抜しようとなったのです」(日本サッカー協会広報部)
そこで、2003年に全国の強豪チームに声をかけて高1の早生まれ選手を募集し、全国5~6カ所で「早生まれセレクション」の選考会を実施した。この選考会でスピードとセンスを認められ、いきなりU-16日本代表に選出されたのが内田選手だった。
「実は早生まれセレクションを実施したのは、この2003年の1回だけです。やめた理由は、その後、国体の年齢区分が1月1日基準に変わったことがひとつ。また、1回実施したことで全国の指導者に早生まれの選手が埋もれやすいことが周知されたからです」(同前)