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周知されたのに問題が解消されない裏に“大人の事情”

 ただ、周知されたといっても、Jリーガーの誕生月の偏りは相変わらずで、早生まれの不利は解消されていないように見える。

「早生まれの子とそうでない子では、中学生くらいだとまだ体格差が残っている。そのため早生まれの子が試合に出られなかったりして、プロを目指す以前のかなり早い段階で競技をやめてしまうことが多いようです。難しい問題だと思います」(同前)

 早生まれの才能ある選手を選抜しようにも、その前の段階で数が減ってしまっているようなのだ。

2014年、ブラジルW杯 ©文藝春秋

 指導者がみな、早生まれが不利なのを知っているのに、いつまでたってもこの問題が解消されない裏には、“大人の事情”があると永野准教授はいう。

「親とコーチの事情ですね。競技志向が低年齢化してきたため、試合に勝つことが目的になり、勝てるチームを作るという方向に進みがちになっている。低年齢ではボランティアのコーチが多いが、コーチが子どもたちのためにと言いつつも、自分への対価のためにも試合に臨んでいるため、勝つことを優先させてしまう。プロのコーチでも、10年後にその選手がどう成長したかが評価の対象になるかは明確でないので、週末の試合に勝つことが目標になってしまう」

 親にしても、トーナメントとなれば勝った負けたで一喜一憂するし、うちの子の方がうまいのに早生まれの子を配慮し試合に出して負けたとなれば、親の間で遺恨が残りかねない。

FIFAランキング世界1位のベルギーで行われている制度

2015年、キリンチャレンジカップでも日本代表に選出 ©文藝春秋

 この問題、解決策はあるのか。

「抜本的に改革するのであれば、たとえば、大会を開いても試合をするだけで順位を決めないとか、学年を誕生月で前半と後半に分けるとか、体格や体力に応じてチームを構成するなど、やり方はあると思います。

 小国のベルギーでは、限られたリソースを有効活用するため、低年齢の段階では誕生月で前期と後期に分ける二期制を取り入れ、早生まれの才能ある選手を取りこぼさないように気を配っている。後期組を“フューチャーズ”と呼ぶそうです。

 誕生月による影響に加え、生物学的にも子どもの成長には差があります。それを分かっている大人たちが、子どもたちの将来のためにも、まずは行動を起こすべきです」(永野准教授)

 ベルギーと言えば、日本は2018年ロシアW杯決勝トーナメントで対戦している。激闘の末、後半アディッショナルタイムに超高速カウンターで逆転された衝撃のシーンは、今も脳裏に焼き付いている。

2014年、ブラジルW杯での内田選手 ©文藝春秋

 ベルギーの人口は約1100万人で日本の10分の1以下だが、最新のFIFAランキングは世界1位だ。世界最強の国がこういう制度を採用しているという事実に目を向けるべきではないか。

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