誕生月が1月から3月までの子供、いわゆる“早生まれ”は、同じ学年の4月や5月に生まれた子供に比べて1年近い成長差があるため、学業やスポーツの成績を同列で比較されると不利になる。その差は中学生くらいになると解消されるといわれてきたが、どうもそうではないらしい。
誕生月でその後の人生に格差が生まれる
東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授は、7月11日に公表した論文で、早生まれの不利は大人になっても続くとする研究結果を報告し、SNSで話題になっている。統計を取ると、3月生まれの人は、同学年の4月生まれの人に比べ、進学した高校の偏差値が4.5低く、大学進学率も低く、30代前半になった時点で所得が4%少なかったという。
誕生月でその後の人生に格差が生まれる――。衝撃的な事実だが、その格差の固定化がより顕著に起きているのが、スポーツの世界だ。
Jリーガーで1~3月生まれは14.6%……プロ選手の誕生月の偏り
早生まれの子供は体格的に不利になりがちで、特に幼少時のスポーツは体格差がもろに結果につながりやすい。スポーツ科学を専門とする横浜商科大学商学部・永野智久准教授はこう言う。
「サッカーや野球などの人気スポーツでは、幼稚園児・保育園児という年齢層から競技としての試合が始まりますが、低年齢化するほど月齢の相対的な差が大きくなります。極端に言うと、同学年の3月生まれと4月生まれでは小1と小2が一緒にかけっこするようなものです。そこで速い子を試合に出すようなことを繰り返していくと、早生まれの子たちはやる気を失い、どんどん淘汰されていく。
早生まれの子の親も試合に出られないのに続けることに意味を見いだせず、子どもとスポーツとの距離をおくようになる。一方の遅生まれの子は試合に出て経験を積み、うまい子は上のチームに選抜されていいコーチに指導を受けるといった具合にスポーツ環境が二極化していくのです」
サッカーや野球では小学生の段階から地域のリーグ戦が始まり、年代ごとに選抜されて国際大会が開かれるが、早生まれはこうしたエリートコースに乗りにくいというわけだ。その結果、何が起きているのかというと、プロ選手の誕生月の偏りである。
永野准教授が、2020年に登録されたJリーガー(J1、J2、J3の出生地が国内)1606人を誕生月ごとに集計した結果が図1である。1年を4分割しているので、平均ラインは25%となるが、4~6月生まれが32.8%であるのに対し、1~3月生まれは14.6%と倍以上の開きがある。