「低生産性経営」に対するアトキンソンの厳しい批判
菅官房長官は、「13年から始めた観光立国の仕組みづくりに際して、アトキンソンさんの本を読み、感銘を受け、すぐに面会を申し込んだ。その後何度も会っている」と述べている(『東洋経済』19年9月7日号)。
アトキンソン氏は経済政策の論客として知られるが、中小企業の生産性が低いことを一貫して批判してきた。今のコロナ禍でも、中小企業を支援する時は「低生産性経営をやめてもらうという条件を付けること」と主張し、「機会があったにもかかわらず成長できず納税もしない企業を優遇すべきではありません」とまで述べている(『日経ビジネス』5月12日)。
これが正論だとしても、今、低生産性を理由に支援を切られれば中小企業の多くが倒産してしまうだろう。
「菅さんも同様に、経済政策では『自己責任』を基本とする新自由主義を進めるでしょう。自己責任において競争すれば経済成長が期待できる反面、頑張れなければ救われず、格差が広がる問題がある。あの竹中平蔵さんやホリエモンに通じるかもしれません」(前出・政治担当記者)
菅官房長官にその片鱗は見える。
菅氏の掲げる「自助」では、若い世代が割を食う
小泉首相(当時)が郵政民営化を果たした後、民主党政権の誕生、自民党政権の復活と続く間に反対派が巻き返し、民営化は後退した。菅官房長官は民営化賛成で、その後退を批判している。
消費税についても、9月3日の会見で「社会保障のために必要なものだ」と述べ、減税を否定した(同日、時事通信)。消費税は、国としては景気に左右されず安定的に徴税できるが、低所得者ほど負担が大きくなる逆進性の高い税だ。
そして総裁選出馬表明と共に国の基本として掲げた「自助」。
9月2日のNHK「ニュースウオッチ9」に出演し、「自助・共助・公助」と書かれたフリップを掲げ、「まず自分でできることは自分でやる、自分でできなくなったらまずは家族とかあるいは地域で支えてもらう…」と語った。
しかし「自助」では、若い世代が割を食うことになる。