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60歳以上が6割保有……高齢者に偏る日本人の資産

 夫婦が老後30年暮らすためには、年金収入の他に2000万円必要――昨年6月、金融庁がこのレポートを発表すると世論が反発し、麻生財務相が無理矢理取り下げたことは記憶に新しい。

 取り下げても現実が変わるわけではなく、年金だけに頼れなければ高齢者はお金を貯めて備えるしかない。

 しかも2000万円は厚生年金受給世帯の平均。より豊かな生活を望めばより多くの資金が必要になる一方、自営業者など国民年金だけの人は月の受給額が5万円台しかなく(18年度)、世帯としては4000万円、5000万円が必要になる。

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菅義偉官房長官 ©getty

 日本人の資産は高齢者に偏り、国民の金融資産と個人所有の不動産の総額2700兆円のうち6割を60歳以上が保有しているが、今後、高齢化と将来不安で高齢者の資産はさらに増えると見られる。

 問題は、こうしてお金を貯めた高齢者が認知症になること。

「自助」により高齢者は資産を貯め、経済成長を阻害する

 認知症が進行して意思能力が無くなれば財産は凍結され、銀行口座からお金を下ろすことも、不動産を売却することも、投資することもできなくなる。

 凍結されている財産はすでに巨額だ。第一生命経済研究所の星野卓也氏の試算では、認知症の人が持つ金融資産は2017年度末で143兆円に上り、このまま認知症人口が増えれば2030年度末には215兆円に達する。

「これだけのお金が消費に回ること無く、投資も行われないのは経済成長に大きなマイナスです。それより、子供や孫が困っている時に親がお金を使えないのは大きな問題です。

 人生終盤の後期高齢者は年金だけで暮らせるようにして、資産が凍結される前に、子供や孫に資産を移転すべきです。若い世代への資産移転については税制改正大綱でも毎年指摘されていますが、促進策の立案は進んでいません」(星野氏)

 菅官房長官が「自助」を求めれば高齢者は資産を貯めて移転は進まず、経済成長を阻害し、若い世代が割を食うことになるのだ。

 菅新政権には、パンケーキのような甘さは無いだろう。

パンケーキを食べる菅義偉官房長官 ©菅義偉