この8月にはイギリスだけでなく、12日からシンガポールとマレーシア、20日からパプアニューギニア及びメコン3国(カンボジア、ラオス、ミャンマー)を回ってきました。国によって規制は異なりますが、入国や帰国のたびに相当な回数のPCR検査を受けています。結果は全て陰性ですし、体調は万全です。
韓国への対抗措置は……
ただ、どうしても「外遊」という感じはしないんですね。例えばパプアニューギニアでは、ポートモレスビーの空港から宿泊先のホテルまで車で5分ほどでしたが、そのホテルに向こうの首相が来て夕食会をやって、翌日の会談も同じホテル。空港とホテルの間しか移動していないんです。地元の美味しい店に行ったり、現地の皆さんと触れ合ったりするのはまだまだ難しいのが現実です。
もちろん、現地に直接出向かなければ、向こうの首相と膝を突き合わせて「日本はこういう取り組みや支援をしていきます」といった話をすることもできません。カンボジアでも、フン・セン首相と3時間の会談を行いましたが、これも直接出向いたから実現したことです。どこの国でもコロナ後、最初の海外要人訪問ということで「コロナで大変な時にもかかわらず、日本は外務大臣がわざわざ来てくれた」と歓迎されましたし、現地の新聞ではたいてい1面トップで大きく報じられました。
率直に言えば、空港とホテルだけの移動は窮屈でしたが、外交的にはそれを上回る大きな成果があった。私はそのように受け止めています。
昨年9月に外務大臣に就任し、ほぼ1年が経ちました。この間、厳しい状況にあったのが日韓関係です。
まず申し上げたいのは、旧朝鮮半島出身労働者問題に関する韓国大法院の判決は、明確な国際法違反だということ。新日鉄住金(現・日本製鉄)に賠償を命じた判決について8月4日、資産差し押さえ命令の「公示送達」の効力が発生しました。すぐに資産が現金化されるわけではありませんが、仮に現金化となれば、深刻な事態を招くことは間違いない。
我が国としては、韓国に対し、国際法違反の状態を一刻も早く是正するよう強く求めていくと同時に、関係企業とは緊密な連携を取っていく。もちろん、万が一の場合をはじめ、様々なシナリオを想定しています。「対抗措置としてこういう選択肢を考えています」と表に出したら、外交になりませんからこの場では申し上げませんが、あらゆる選択肢を視野に入れて毅然と対応していきたい。
もう一つ、日韓関係を難しいものにしているのが、輸出管理の問題です。我が国は昨年7月、半導体材料などの韓国への輸出管理を厳格化しましたが、この件についても、康京和外交部長官とは、輸出管理当局間で解決に向けて対話を重ねることが大事だと話をしてきました。ところが、当局間の対話が続いているにもかかわらず、韓国側の要請で7月下旬、WTOに紛争処理小委員会が設置されたことは極めて遺憾です。我が国としてはWTO協定の手続きに従って、淡々と対応していきます。