9月17日、福岡地裁で開かれていた裁判員裁判で、古賀哲也被告(36)に対し求刑通り無期懲役の判決が下った。この判決は、犯行の残忍さもさることながら、累犯者の更生の可能性の判断という点でも大きな注目を集めていた。
事件が起きたのは2019年7月6日夜、福岡県粕屋町。古賀被告は自転車で帰宅途中の会社員女性(38)に狙いを定めると自動車で先回りして待ち伏せし、須恵川沿いの道で自転車から引きずり下ろすと、首を絞めて殺害。財布などを奪った遺体を須恵川に遺棄し、一度現場を離れた後に、犯行の発覚を遅らせるために現場に戻り自分の指紋を消してもいた。
9月11日の公判では、被害女性の長男(中学生)の意見陳述書が弁護人によって読み上げられた。法廷は静まり返った。
「学校で家族の話になったり、クラスのみんなが新しい体操服のゼッケンをお母さんに縫ってもらったといった話を聞いたりして、最初は我慢していましたが、やっぱり辛くて、誰にも言えなくて、吐き出せなくて、自分の中で抱え込んでしまいます」
妻を突然失った夫は同日の公判後に会見を開き、記者たちを前にこう訴えた。
「妻は太陽のように、いつも家族を照らしてくれる存在だった。一人息子との暮らしは、妻を、母を失って一変した。2人とも眠れなくなり、息子の笑顔はぎこちなくなった。(この1年)つらくて海の底にずっといるような感じで、地獄の日々を過ごしてきた」
殊勝な態度に記者が感じた「違和感」
古賀被告は公判に、伸びかけた坊主頭と白のワイシャツと黒いパンツ姿で現れた。最終意見陳述では、「被害者や遺族に本当に申し訳ない。人の命を奪ったので、死刑が妥当ではないかと思う」などと発言。弁護側は「起訴内容を認めて深く反省している」と主張した。
だが、法廷を取材していた司法記者はその一見殊勝な態度の中に、「ぞっとするものを感じた」と話す。
「古賀被告はたしかに起訴内容を認めていますが、強い違和感があったのはその“認め方”です。女性を襲った動機を問われた時に、言い淀んだり表情を歪めたりすることなく、『強姦目的でした』という言葉がさらっと口から出てきたんです。その言い方があまりに淡々としていて、言葉の内容の重さと話し方のバランスが崩れているように感じました。罪悪感のようなものを見て取るのは難しかったです」(同前)
検察側の主張にもあるが、古賀被告は過去に性犯罪事件を3度起こしている。2006年に大阪で強姦事件を起こして服役。2014年に長崎での強制わいせつ事件で再び収監され、2017年8月に出所していた。