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『のだめ』はなぜ超名作になった? 14年前、玉木宏が見せつけた“上野樹里を輝かせる演技”の正体

女性が求めているのはイケメンだけではない

2020/09/22

 コロナ禍によるドラマ再放送まつりも一段落したところで、真打ち登場とばかりに放送されている『のだめカンタービレ』(06年 フジテレビ系)。上野樹里と玉木宏が主演し、演出は映画『翔んで埼玉』(19年)などを手掛ける武内英樹ほか。

 14年経ったいまでもエンタメ界のトップを走っている顔ぶれで挑んだ人気音楽漫画の実写化は、格調高いクラシックとラブコメの融合が間口を広げ、本放送当時の平均視聴率は18.9%だった。

『のだめカンタービレ』の主演を務めた上野樹里と玉木宏 ©時事通信社

千秋とのだめを見ると“あの名作漫画”を思い出す

 指揮者を目指すエリート音大生・千秋(玉木)と、ピアノの才能はあるが、部屋は散らかしっぱなしで言動も突飛な変り者であるのだめ(上野)は共に音楽の高みを目指す同志となっていく。

 眉目秀麗、音楽の才能抜群だが、あるトラウマのせいで他者に対してぶっきらぼうなところのあった千秋は、のだめから音楽の楽しさを再認識させられ、音楽以外なにもできなかったのだめは千秋に近づくために向上心を持つようになる。互いに良い影響を与え合うパートナーシップを見ていると、ある漫画のセリフが浮かんでくる。

「男なら女の成長をさまたげるような愛し方はするな!」

野田恵役を演じた上野樹里 ©文藝春秋

 これはアニメ化もされた名作テニス漫画『エースをねらえ!』(73~75年、78~80年)のものである。天才テニスプレイヤーであるヒロインひろみの恋人・藤堂に、テニスのコーチ・宗方がこのように言って釘を差す(単行本第4巻より)。

女性が求めているのはイケメンだけではない

 男ならやさしく、女性の面倒をみるべき、ではなく、女性が成長するように接するべきというジェンダー問題に切り込んだ漫画が70年代に存在していた。にもかかわらず、21世紀の今、発足した菅内閣の女性閣僚は2人で「女性が活躍する社会」にほんとうになるのか疑問でしかない。

 クールジャパンに漫画文化が欠かせないのであれば、もっと漫画から学んでほしいということはさておき、女性が求めているのはイケメンだけではない。自分を成長させてくれる男性なのである。『のだめ』は才能ある美しい男に才能で並ぶという最高のドリームを満たしてくれる。

 2000年代にドラマの世界に現れた「女の成長をさまたげない愛し方」をする人物――それが『のだめ』の千秋だった。