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日本人の「6人に1人が貧困」 “生活保護”をイメージで語る人が知らないこと

「コロナ禍で今月の生活が苦しい」という時に“読むべき漫画”がある

2020/09/23

 漫画の作中では、生活保護にまつわるさまざまなテーマが取りあげられているが、たとえば「扶養照会」。扶養義務のある親族に対して利用者の援助ができないか、福祉事務所が確認の問い合わせをするのだが、これを嫌がって生保受給をやめる人も多い。こういった生活保護をとりまく様々なテーマについて、マンガを読みながら学ぶことができるのが、大きな魅力だ。

 
 
扶養照会とは、生活保護の受給申請が行われた際に申請者の親族が扶養できないかを確認すること。本編でえみるが担当する島岡は、とある複雑な事情から父へ連絡されることを頑なに拒む。『健康で文化的な最低限度の生活』第3巻より ©柏木ハルコ / 小学館

なぜ筆者はこの作品を読んでほしいのか

 生活保護制度は、私たちの生活を支えるための公的な仕組みでありながら、さまざまな誤解や偏見により、その役割の価値や意義について、語られることが少ない制度でもある。

 現に、200万人以上の人の生活を支え、高齢や病気や障がいなどで働くことが難しくなってしまった人や、失業して求職活動をしている人などを支える大切な制度である。

『健康で文化的な最低限度の生活』という生活保護をテーマにした稀有な作品に触れれば、公務員として、生活保護利用者を支援することになる主人公を通じて、生活保護制度の実態、利用者のいるリアルな現場を見ることができる。

 この作品に登場する人々は、もちろんフィクションではあるものの、支援の現場に身を置く筆者からしても、非常に丁寧な取材に基づいた、とても生々しいもので、そのリアリティは圧倒的だ。

 新型コロナウイルスの影響で、多くの人の生活が脅かされ、生活の不安を抱える人が増加している。多くの人が「貧困」に陥ってしまうリスクを抱えるなかで、「自己責任」ではなく、「社会で支えあう仕組み」がもっと評価されてもいいと、筆者は考えている。

 
 
生活保護のケースワーカーとして生活に困窮した人々を担当するなかで、自分の仕事の難しさの向こうにある「喜び」と「意味」にえみるは気づいていく。『健康で文化的な最低限度の生活』第5巻より ©柏木ハルコ / 小学館

 6人に1人が「貧困」と言われるこの現代日本で、私たちの身近なところに、生活が苦しい人はたくさんいる。新型コロナウイルスの影響で、その生活の不安定さはいっそう増してきている。

 生活保護について知るためにも、ウィズコロナ、ポストコロナを考える上でも、『健康で文化的な最低限度の生活』は、いま読んでおくべき一冊だ。ぜひ未読の方は手にとってみてほしい。

 

『健康で文化的な最低限度の生活』(柏木ハルコ著)は、2014年「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)にて連載開始して、現在第9巻まで刊行されている。新人ケースワーカー・義経えみるを主人公に、様々な生活保護にまつわるテーマを扱っているが、「アルコール依存症編」「子どもの貧困編」に続いて、現在「貧困ビジネス編」を連載中。

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