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「月200万円のギャラが1円も残らない」…“71歳で他界”岸部四郎のあまりに壮絶な“借金地獄”

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「オレを誰や思てんねん!  元金持ちやぞっ!!」

 当時、岸部さんの債権者は、高利業者36社を含めて69を数えた。そんな「借金地獄」から自己破産で逃れた岸部さんは、単発でバラエティー番組に出演するようになり、「オレを誰や思てんねん!  元金持ちやぞっ!!」などの自虐コメントで笑わせるなどしていた。01年以降は、ドラマ、映画にも出演して「復活」を感じさせたが、07年には再婚した妻が43歳で急死する不幸にもみまわれた。

©️文藝春秋

 自身の健康状態も悪化していた。03年、脳内出血で倒れ、後遺症で視野狭窄を患った。ブログでは、右目の視野が3分の1しかないことを告白。09年には、体の自由がきかなくなって入院している。12年2月に骨折して入院して以降は、老人ホームで生活。芸能界から引退状態になっていた。

タイガースのメンバーが見守る中で「イエスタデイ」

 その後、公の場に姿を見せたのが、13年12月27日、ザ・タイガースライブツアー最終日の東京ドーム公演だった。岸部さんは、車椅子姿で登場し、森本さんを含むタイガースのメンバーが見守る中で「イエスタデイ」を歌った。

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ザ・タイガースライブツアー最終日、車椅子姿で登場した岸部四郎さん(中央) ©️時事通信社

 岸部さんが、自己破産に陥って森本さんも責任を感じたことだろうが、2人は「仲間」としての関係を続けていた。14年11月21日には、森本タローとスーパースターの再結成15周年コンサートに兄・岸部一徳らとゲスト出演した。その日のことを森本さんは、ブログにつづっている。

「四郎が自分からステージで歌いたいと言って実現した。ギターを持って病室を訪ね、一緒にリハーサルをしたことも思い出す。具合が悪くなってもやっぱり四郎は最後までステージに立って歌いたかったんだな。こんなに早くタイガースのメンバーとの別れが来るとは思ってもいなかった。四郎君、心からご冥福をお祈りします」

 森本さんの言葉通り、岸部さんは、何があっても、仲間たちとの絆を大事にしていた。ザ・タイガースのメンバーでは、最後に加入した弟分だったが、波乱万丈の人生を先に終え、旅立った。借金地獄よりも遥かに居心地がいいであろう天国……。岸部さんは、そこで、ザ・タイガース再結成の準備を進めているのかもしれない。

「月200万円のギャラが1円も残らない」…“71歳で他界”岸部四郎のあまりに壮絶な“借金地獄”

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