飛蚊症の正体は…
「ヒブンショーは“飛蚊症”と書きます。眼球の大半を構成する“硝子体”の一部が濁ったり、縮んで網膜の一部から剥がれたりして眼球の中を漂っているのです。症状は個人差があり、黒いテントウムシのようなものが一匹だけゆっくり動いていたり、もっと小さなゴマ粒のような黒点が一斉に広がって行ったり、黒い煙のようなものがゆらゆら揺れて見えることもあります」(蒲山医師、以下同)
まずは目の構造をおさらいしておこう。
目から入ってきた光は、角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を経て一番奥の網膜に照射される。網膜の中でも一番中心の狭い領域を「黄斑」と呼ぶ、黄斑で得た情報は視神経を通じて脳に送られ、脳で初めて映像化される仕組みだ。
角膜と瞳孔、水晶体は目の表面に近いところにあるが、その後ろの、球状の眼球のほぼ大半は、硝子体というゼリー状の物質で満たされているのだ。この“ゼリー状”を構成する成分(水分やコラーゲンなど)が何らかの原因で濁りをつくり硝子体の中を浮遊すると、そこを通る光を遮るため、黄斑が光を感じる時に影ができる。これが飛蚊症の正体なのだ。
では、なぜ硝子体の一部が濁るのか。原因はいろいろあるが、一番多いのは“加齢”だ。
「飛蚊症とは、硝子体の中を何らかの物質が漂う状態の総称です。その9割を占めるのが加齢によるもの。加齢現象なので誰の目でも必ず起きますが、症状を感じるかどうかは人それぞれ。症状が出る人は30代から40代あたりで自覚することが多いとされています」
36歳のR子さんは、年齢的に妥当な発症と言えそうだ。蒲山医師が続ける。
「加齢によって起きる飛蚊症は、正確には『生理的飛蚊症』とよばれ、放置しても視力などに影響が出ることはありません。レーザーで濁りを蒸散させたり、手術で取り除くことも技術的にはできなくはないものの、基本は経過観察(様子を見る)ですね」
9割が生理的飛蚊症なら、残る1割は何なのか。
「『病的飛蚊症』と呼ばれるもので、これは何らかの病気が原因で起きている飛蚊症です。考えられる病気としては、網膜剥離や網膜裂孔、目の血管からの出血や血中成分の漏出、中には糖尿病から起きる飛蚊症もあります。こちらの飛蚊症は視力障害を残す危険性があるので、早期の治療が求められます」