暑かった夏がようやく終わり、秋の気配が訪れた日本列島。
なのにまだ蚊が飛んでいるところがあるとか……。
その場所は、目の中。
眼球を動かすと、その動きを追うように、少し遅れて黒い“影”がゆっくりと視界を横切っていく。じつにどうも、鬱陶しい。
「ヒブンショー」と呼ばれるこの症状、加齢現象の一種ではあるものの、時に重大疾患が潜んでいることもあると言います。
いったいどんな病気なのでしょう。
目を横切る“黒い影”
埼玉県に住むR子さん(36)がその“影”の存在に気付いたのは、会社でパソコンに向かっている時だった。
画面の下のほうを、右から左に向かって、ゆっくりと、小さな影がスーッと横切っていく。虫が出たかとギョッとしたが、凝視しようとするとどこかに消える。
しかし、また画面に目をやると、その下のほうをスーッと黒い影が通り過ぎる。
目をオフィスの壁に転じると、視線よりやや下のほうを、目の動きにやや遅れるようにして“影”がついていく。しかし、その影を凝視しようとすると、やっぱりどこかに消えてしまう。
悪い病気か、あるいは何かの霊かと思って同僚の男性スタッフに相談すると、
「ヒブンショーだろ? 俺もあるよ」
と、事もなげに答える。
帰宅して夫に相談すると、
「ヒブンショーだろ? 俺もあるよ」
と答える。
「みんなが知っていて、みんなが持っているヒブンショーって、一体何なの?」
とうろたえるR子さんの疑問に、埼玉県川口市にある「川口眼科」副院長の蒲山順吉医師が答えてくれた。