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計画通りなら今回の豪雨に間に合っていた

〈「ダムによらない治水」については、一応、いくつかの案が出されています。「遊水池」「放水路」「引堤(ひきてい)」「堤防嵩上げ」です。

「遊水池」というのは、洪水が起きたときに川の水を一時的に氾濫させる池のことです。これには広大な土地の確保が必要で、予算は約1兆2000億円もかかります。工期はおよそ110年ですから、完成までに、再び大きな洪水被害に見舞われることは間違いありません。

「放水路」というのは、川をもう一本つくり、球磨川の水をそちらにも流すというものです。これも予算が約8200億円かかり、工期も45年です。

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「引堤」というのは、堤防の幅を広げることです。これも予算が約8100億円で、広域の土地を高台にするため、工期は200年もかかります。

「堤防嵩上げ」というのは、文字通り、堤防を高くすることです。土地の新たな買収は不要なので、予算は約2800億円ほどですが、工期は95年もかかります。

熊本県の蒲島郁夫知事 ©AFLO

 治水技術者たちは、「今年は大丈夫だろうか?」と、毎年、ロシアンルーレットを見るような危機感を抱いていました。ところが、「ダムによらない治水」のいずれの案も、「予定工期」から明らかなように、そうした危機感を欠いた、何とも“悠長な”計画なのです。

 これに対し、「川辺川ダム」は、2008年時点で計画の7割まで進んでいて、2017年には完成予定でした。つまり、計画通りであれば、今回の豪雨災害に間に合っていたのです〉

出典:「文藝春秋」9月号

「川辺川ダムが建設されていたら、ここまでの被害にならなかった」と主張する藤井聡氏の「熊本豪雨災害は『脱ダム』の悲劇だ」の全文は、「文藝春秋」9月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

文藝春秋

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熊本豪雨災害は「脱ダム」の悲劇だ