新型コロナの感染拡大の為、来年7月に延期された東京オリンピックは、開催されるのだろうか。

 自らスーパーマリオに扮しホスト役を買って出て、年明けの通常国会では今年最大の“政治イベント”と謳った安倍晋三首相の突然の辞任劇から、「令和」の幕開けを告げた菅義偉内閣官房長官への政権移行に至る喧騒の中で、このオリンピック開催問題はほとんど語られることはなかった。

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警察人事は「オリンピック開催中止」のサインか

 ただ、この直前に五月雨式に行われた警察幹部人事(8月21、24日発令)だけは、「開催中止」を見据えたものだったように私には見えた。しかも霞が関の恒例の「人事の季節」を微妙にずらしていただけに、政界をはじめスポーツ界も、コロナ禍に余りにも近視眼的だった為に、このサインに気付かなかったのかもしれない。

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 というのも、開催まで1年を切る中、唐突にもオリンピック大警備の中核を担ってきた警視庁の小島裕史警備部長(昭和63年採用、警察庁)が北海道警察本部長へ、警察庁の千代延昇平警備企画課長(平5年)が群馬県警本部長へ、それぞれ転出したからである。

 これにより、警察庁はオリンピック担当審議官に小柳誠二生活安全局審議官(平3年)、警備企画課長に若田英公安課長(平6年)、警備運用部筆頭の第1課長に鎌谷陽之警備2課長(平8年)と、警備ラインは平成採用組へ一新され、同庁内外からは、「余りにも軽量化人事」とか、「オリンピック中止の先取りでは」との憶測まで流れていた。

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 一方、警備現場を直接指揮する警視庁は、齋藤実警視総監(60年)、緒方禎己副総監(62年)、下田隆文警務部長(63年)の、歴代警備部長の揃い踏みとなり、小島警備部長の後任には、警視庁警備第1課長経験者の森元良幸オリンピック担当審議官(平3年)が新たに名前を連ねることになり、松本光弘警察庁長官(58年)は、「オリンピック警備中止の場合の、保険の意味でも、“ミスターオリンピック”の異名を取る齋藤総監を戴く警視庁に丸投げした格好だ」(警視総監経験者)という。

 しかも今回の人事には、別の狙いが窺えるようだ。