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「ずっと黒澤映画のようなドラマを作りたかった」 最終話を迎える『半沢直樹』に見るエンタメの‟神髄”とは?

“テーマがない”作品になぜ視聴者は熱狂するのか

2020/09/27

 TBS系のドラマ『半沢直樹』が今夜最終回を迎える。第5話(厳密にいえば第4話の終盤)から始まった後半「帝国航空編」では、主人公の半沢(堺雅人)が大手航空会社の再建計画に銀行員として携わる。

 そのなかで、同じく再建計画を進めながらも銀行側に債権放棄を求めるタスクフォース(国土交通大臣が設置した諮問機関)と真っ向から対立。銀行内でも政府側に立つ常務の紀本(段田安則)から妨害を受けたため、彼について調べるうち、与党幹事長の箕部(柄本明)との関係を突き止め、さらには紀本がかつて箕部への巨額の不正融資にかかわっていたという事実にぶち当たる。不正を徹底追及する半沢は、先週9月20日放送の第9話では、信頼していたはずの頭取の中野渡(北大路欣也)まで敵に回すことになり、銀行にいられるかどうかの瀬戸際に立たされた――。

『半沢直樹』主演を務める堺雅人 ©文藝春秋

 問題を追及するうちに、途中でさらなる大きな闇に突き当たるという展開に、今夏公開された『はりぼて』や『誰がハマーショルドを殺したか』といったドキュメンタリー映画との共通性を感じた。

 このうち富山のチューリップテレビが制作した『はりぼて』では、市議会の政務活動費をめぐる不正を追っていた記者とキャスターが最後の最後に報道部門から外されてしまうのだが、彼らの立場は最終回を前にした半沢とどこか重なり合う。ちなみに『はりぼて』でナレーションを担当したのは、『半沢』と同じく元NHKアナウンサーの山根基世だった。

 ご存じのとおり、今回の『半沢直樹』は、2013年に大ヒットしたシリーズの続編だ。前作は回を追うごとに視聴率が上がり、最終話は平成のドラマでは最高視聴率(関東地区で42.2%)を叩き出した。あれから7年、満を持しての新シリーズは、コロナ禍の影響でスタートが当初予定された4月から7月にずれ込んだが、視聴率は毎回20%台を記録、俳優たちの熱演もあいまってSNSやネットニュースでも話題が尽きない。

前作の撮影で原作者の池井戸潤氏(左)と話す堺 ©文藝春秋

 今回のドラマの原作は、池井戸潤の小説「半沢直樹シリーズ」のうち3作目の『ロスジェネの逆襲』(単行本刊行は2012年)と4作目の『銀翼のイカロス』(同2014年)である。ドラマのパートでいえば前者は第4話まで、後者はそれ以降に相当する。

懸念された作中モチーフの“時代感”

 シリーズが始まるにあたって、筆者が懸念したのは、作中で扱われるモチーフがいまドラマ化するにはちょっと古びてはいないかということだった。たとえば『ロスジェネの逆襲』ではIT企業の買収劇が描かれたが、作品の舞台となる時代は単行本刊行よりさらに8年さかのぼる2004年。現実の世界では、ライブドアや楽天といったIT企業がプロ野球参入に名乗りを挙げたことが話題を呼んだころだ。翌2005年には、ライブドアがニッポン放送株を大量購入し、経営権を奪取しようとするできごとも起きた。ただ、このような動きがIT業界であまり目立たなくなったいまとなっては、ドラマで大型買収をとりあげても視聴者が乗れるのかどうか。『銀翼のイカロス』にしても、2009年に発足した民主党政権が取り組んだJALの再建計画から着想を得ているだけに、時事性は薄れている。