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「ずっと黒澤映画のようなドラマを作りたかった」 最終話を迎える『半沢直樹』に見るエンタメの‟神髄”とは?

「ずっと黒澤映画のようなドラマを作りたかった」 最終話を迎える『半沢直樹』に見るエンタメの‟神髄”とは?

“テーマがない”作品になぜ視聴者は熱狂するのか

2020/09/27
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原作がドラマから影響を受けることも?

 ちなみに原作では中野渡はかなりの長舌を振るい、池井戸は《すごく長いから、書きながら北大路欣也さんに、これ、ぜんぶ覚えて頂けるかな、と心配になった(笑)》という(※3)。『銀翼のイカロス』の連載時期はちょうどドラマの放送と重なったので、書いているうちにやはり演じる俳優のことが思い浮かんだのだろう。じつは黒崎も、池井戸は同作に出すつもりは当初なかったのに、ドラマの撮影を見学した際、片岡愛之助が演じるのを見てすごく面白かったので、再登場を決めたのだとか。原作がドラマから逆に影響を受けたというのが面白い。

おネエ口調が人気を博した片岡愛之助演じる黒崎(右) ©文藝春秋

 なお、池井戸は『銀翼のイカロス』刊行にあたって、次のようにも語っていた。

《僕は『イカロス』で半沢直樹の物語の第一幕は終わったと思っているんです。舞台の東京中央銀行は合併した大銀行で、旧T(東京第一銀行)と旧S(産業中央銀行)という二つの派閥があります。その闘争がこれまでの三作を通した対立軸になっていましたが、四作目の『イカロス』である着地点を見出すことができた。シリーズが今後どこまで続くかわかりませんが、次作から新しいステージへ移行することは確かです》(※3)

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最終話で北大路欣也演じる中野渡頭取は何を語るのか ©文藝春秋

 この言葉どおり、先ごろ6年ぶりに刊行された小説・半沢シリーズの新作『アルルカンと道化師』は、まったくステージを変えて、第1作『オレたちバブル入行組』より前の時代が舞台となった。これもいずれドラマ化されるのだろうか。福澤が“先約”を入れたとおり半沢が頭取になるのは一体いつかと考えると、まだまだ先は遠い。ドラマの第2シリーズはひとまず今夜をもって終了するが、『半沢直樹』には今後もぜひ息長く続いてほしい。

※1 「リコー経済社会研究所」2014年1月1日配信
※2 「文藝春秋BOOKS」2013年7月5日配信
※3 『週刊文春』2014年8月14・21日号

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