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異例のヒット…低予算の中国系映画がトランプ政権下の白人になぜ響いたのか

映画『フェアウェル』

note

「映画館では白人も喝采していた」

 ルル・ワン監督は、ドキュメンタリー的に、実在の場所、人物を取り入れて作品づくりをした。ナイナイの自宅は自らの祖母の家、ナイナイの亡夫の墓は祖父の墓、ナイナイの孫の結婚式は実際の孫が祝宴をあげた宴会場で撮影。そして、ナイナイの介護をする妹は、モデルになった自らの祖母の妹に演じさせている(もちろん演技経験はない素人!)。

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 ナイナイの孫の結婚相手、アイコを演じた水原碧衣が語る。孫は日本に移住したが、ナイナイに会うために日本人の婚約者アイコを連れて、中国に帰郷するという設定だ。

「私も、実際のアイコさんと雰囲気が似ていたようです。ルルさんの演出は要求せず、好きなようにやってというタイプ。結婚式で『竹田の子守唄』を夫婦で歌うシーンがあるんですが、1番までしか用意していなかったのになかなかカットがかからないから笑いをこらえられずにいたら、その困った表情が使われていました(笑)。脚本を読むかぎりはシリアスな作品だと思っていたんですが、実際はドラマの入ったコメディ。しかもシュールなんです」

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日本人花嫁をコミカルに演じた水原碧衣は、中国を拠点にする日本人女優。京都大学法学部卒業後、早稲田大学法科大学院を休学中に、チェン・カイコーやチャン・イーモウを輩出した超名門・北京電影学院の演劇科に留学し、首席で卒業した(史上初の留学生首席)。

 水原さんは、本作上映中のアメリカの映画館で忘れられない体験をしたという。

「反応が知りたくて映画館に行ってみたんですが、白人のお客さんも喝采しているんです。以前はアジア系俳優が出るアメリカ映画は『グリーン・デスティニー』みたいなファンタジーでした。でも、オークワフィナが出演した『クレイジー・リッチ!』(18)と今回の『フェアウェル』でリアルなアジアを描くアメリカ映画が台頭してきています。また、『フェアウェル』は中米日をつなぐ物語でもあります。実在のアイコ夫妻は今も日本に住んでいるんですよ」

INFORMATION

映画『フェアウェル』(原題 THE FAREWELL)
監督・脚本:ルル・ワン
出演:オークワフィナ、ツィ・マー、ダイアナ・リン、チャオ・シュウチェン、水原碧衣ほか
10月2日(金)公開
http://farewell-movie.com/

異例のヒット…低予算の中国系映画がトランプ政権下の白人になぜ響いたのか

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