キューバ、モンゴル、アイスランド、そしてコロナ後の東京……。オードリーの若林正恭さん(42)が旅した国々を綴ったエッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(文春文庫)が刊行される。執筆中に、父の死去や結婚など、私生活で大きな変化が続いた若林さんに心境を聞いた。

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4年前に旅をして単行本を刊行

――キューバに一人旅をされたのが2016年。そもそも、どうして旅行先にキューバを選んだのですか?

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若林 東京って、100%自己肯定するのが難しいルールになってると思うんですよ。それで、自分が感じる社会との違和感を突き詰めると、“資本主義”や“新自由主義”にぶち当たった。だったら「ぼくが経験したことのないシステムの中で生きている人たち」の国に行きたいと思ったんです。

©️文藝春秋

――4年経って、改めてご自分が書いた文章を読んでみて、どう思いましたか?

若林 この人しつこいなと思いました(笑)。38歳にもなって、東京ってどういうところなのかを知るために、1人でキューバに行くわけでしょう。

――その頃と比べると、大人になったと思いますか?

若林 それをよく聞かれるんだけど、いまだにキン肉マンのキン消しで興奮しちゃったりとか、自信を持って成長したと言えるようなことはないんですよね(苦笑)。

――エッセイでは、自分のことを「集団にとってめんどくさい人」と表現して、自意識の強さを自覚しています。一方で、芸人や業界の先輩に、人生についてたくさん相談しています。人にアドバイスを求めることを恥ずかしく思ったりはしませんか?

若林 信用できるなって思う人の分け方が、結構シビアな方だと思うんです(笑)。芸とか人柄とか、相手を包み込んでいる方を吟味しているかもしれない。

全く逆に振り切って、そこからちょっとずつ戻ってくる

――例えば、どんな方に相談されるんでしょうか。

若林 事務所の先輩のはなわさんには、20代前半の頃からずっと相談してきました。

――印象に残っているはなわさんの答えはありますか?

若林 僕、確かに自意識が強いので、突飛なネタを作れなかったんです。オードリーは漫才をするんですけど、漫才ではないコントで別の人格になることも苦手だった。それで、地味なネタばかりになって悩んだ時に、はなわさんに相談しました。

©️文藝春秋

 はなわさんは「一度、自分と全く逆に振り切って、そこからちょっとずつ戻ってくるぐらいでいいんだよ」って言ってくれました。そうしたら直後にたまたま、春日が緑のモヒカンになってたんです(笑)。しかも、その数日後に春日から電話がかかってきて、「モヒカンを止めたい」って言われて! いろいろ荒療治って感じで印象的でしたね。