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アプリ「棋譜中継」なら進行がわかる

 私の観る将歴は、AbemaTVが企画した「藤井聡太四段 炎の七番勝負」から始まった。息子が教室に通いだして将棋がちょっと気になりだした頃、藤井聡太四段とトップ棋士との対局を見て、すっかりその面白さにハマった。

 それから中継される対局があれば見るようになったのだが、一度見始めると夢中になって仕事が進まない。とはいえ目を離すと、どのように進行したのかわからない。そんなとき「棋譜中継」なるアプリがあることを知って登録した。これでちょっと目を離しても進行がわかるので、今では要所、要所で中継を見ている。

 好きな棋士は、どんどん増えている。高野秀行六段はもちろんだが、取材などでお会いした棋士はみんな大ファンになる。野球やサッカーと違って、好きな棋士の対戦相手を嫌いになるということはまったくない。みんな好きになるのが、将棋の稀有な魅力ではないだろうか。

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 そんななかでも深浦康市九段、豊川孝弘七段の解説と、武富礼衣女流初段の聞き手はとりわけ楽しみにしている。対局者よりも解説者を楽しみにしている傾向があるので、やはり私も完全な「観る将」だと思う。

「両取りヘップバーン」「同飛車大学」などのダジャレ解説でおなじみの豊川孝弘七段 ©️文藝春秋

同じ“アマ二段”でも見方は違う

 この場に参加してくれた他の方々の意見も面白かった。

「棋譜中継されている対局は、すべて目を通しています。最近は中継局も多くなったので時間的に大変ですが、強くなれると思うのですべて見ます」(Kさん/アマ二段)

「振り飛車党なので、棋譜中継されている対局でも振り飛車のものから優先して見ます。角換わりとか横歩取りは、タイトル戦以外はほとんど見ません。好きな棋士? 藤井猛九段です」(Iさん/アマ二段)

 同じような棋力の人でも、このように見方が違うのが面白い。性格が将棋の見方に出るのだなぁ。最後にまだ将棋を始めたばかりという、推定棋力10級のOさんの話を紹介しよう。

「指し手のことは、全然わからないのですが、人が一生懸命考えている姿を見るのが好きです。棋士の考える姿を見ていると自分も集中できるような気がします」

©️文藝春秋

 思ってもみなかった答えだが、人が集中している姿を見ていると、自分も集中できるというのは、なんかわかるような気がする。「作業用DVDといった感じですか?」と聞くと、「考えたことなかったですが、そうですね(笑)」とのこと。思わぬ楽しみ方があるものだ。

 やはり、将棋は棋力に関係なく観て楽しめるものだ。ただ、棋力が上がれば、楽しみ方も増えていくだろう。棋力を上げたいけれど、棋書は難しくて――という方がおられたら、「将棋の通訳になりたい」という高野秀行六段の解説がわかりやすい『将棋「初段になれるかな」大会議』がお勧めだ。

将棋[初段になれるかな]大会議

高野 秀行 ,岡部 敬史 ,さくら はな。

扶桑社

2020年9月23日 発売

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