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《池袋暴走》なぜ“上級国民”は無罪主張するのか?「車の異常で暴走した」

「天地神明に誓って踏んでない」元特捜検察のエースには禁錮3年求刑

2020/10/12

 今回の池袋事案とよく似たケースがある。元東京地検特捜部長で弁護士の石川達紘被告(81)の公判だ。

石川弁護士 ©文藝春秋

元特捜部長も「天地神明に誓ってアクセルを踏んでいない」

 石川被告は、2018年2月18日、車を路上に止めて降りようとした際に誤って急発進させ、時速100キロ超で約320メートル暴走させ、東京都港区の歩道上で堀内貴之さん(当時37歳)をはねて死亡させたとして起訴されている。問われているのは、自動車運転処罰法違反の過失致死罪で、過失犯だ。被害者は死者のみだった(けが人がいなかった)ため、致死傷ではなく致死になっている点が飯塚被告と違う。

 石川被告の初公判は20年2月。事故から2年を要している。しかも、飯塚被告と同様、逮捕されることなく、書類送検、在宅起訴の手順を踏んでいる。キャリアをいうと、石川被告は1989年に特捜部長に就任し、99年~2001年に福岡と名古屋の高検トップの検事長を歴任している。検事長はいわゆる「認証官」で、天皇陛下からの認証を受けるという、まさに「上級国民」だ。

 さらに、石川被告も初公判で「天地神明に誓ってアクセルを踏んでいない」と、無罪主張した。事故原因については「車体の不具合で加速した」と、飯塚被告と同様に「車のせい」にしたのだ。石川被告の公判では、事故で死亡した男性の妻が「(石川被告が)裁判で『私も被害者だ』と話しており、胸をえぐられるようだった」と証言しており、被害者遺族の心の傷に追い打ちをかける形になっている。

東京地方裁判所 ©iStock.com

 折しも2日に開かれた論告公判で、検察側は石川被告に禁錮3年を求刑した。この後、最終弁論公判、判決公判までのスケジュールを考えると、公判は1年近くに渡る可能性が高い。さらに、有罪判決が出て石川被告がさらに争った場合、審理は2審(控訴審)に移って長期化するだろう。飯塚被告の公判も、被告の無罪主張によって長期化が予想される。その間、被害者遺族は闘い続けなければならない。そして、石川被告の「禁錮3年」という求刑は、多くの場合、執行猶予判決の相場だ。飯塚被告の求刑は今後どうなるのか、気になるところだ。

 この2被告と、ある意味で好対照ともいえるのが、2018年に前橋市内で2人を車ではねて死傷させたとして自動車運転処罰法違反の過失致死傷罪に問われ、1審で無罪とされた川端清勝被告(88)のケースだ。川端被告は事故当日に逮捕されており、当時無職で、飯塚被告や石川被告のような著名なキャリア情報はない。