被告側が「有罪判決を求めた」控訴審も進行中
川端被告の弁護側は6日、東京高裁(近藤宏子裁判長)の控訴審第1回公判で、「被告は罪の成立を認めている」として一転して有罪判決を求めた。無罪を言い渡された被告側が自ら逆転有罪を求めるのは異例で、11月25日に言い渡される高裁判決が注目される。
事故は18年1月9日朝に起きた。川端被告は乗用車を運転中に反対車線を逆走し、自転車で対向してきた太田さくらさん(当時16歳)を死亡させ、別の女性(当時18歳)にも重傷を負わせたとして起訴されていた。1審では被告が事故を予見できたかどうかが争点になり、弁護側は無罪を主張。20年3月の1審・前橋地裁判決は「被告が持病の薬の副作用で低血圧に陥り、意識障害によって事故を起こした可能性が大きい」と認定して検察求刑(禁錮4年6カ月)に対し、無罪を言い渡していた。
川端被告の弁護人は、福祉施設に入所して出廷しなかった被告に代わって「被告と面談し、有罪を認める意思確認を行った。犯した罪を償い、人生を終わらせたいと思っている。被害者(や遺族)の苦しみを思うとその思いは一層深まっている」と説明した。太田さんの遺族は閉廷後、代理人弁護士を通じ、「有罪主張に至った経緯を弁護人から聞くことができ、一定程度理解できた」などとするコメントを出している。
裁判所は被告の有罪主張だけで判断するわけではなく、当然に法と証拠に基づいて判決を出すため、今回の川端被告側の主張変更で「逆転有罪」が決まったわけではない。ただ、飯塚被告や石川被告の無罪主張が話題になる中で、被害者遺族の「一定程度の理解」を引き出した川端被告の対応は、社会的にも好感を持って受け入れられるだろう。
3人の被告はいずれも80代。大前提として、刑事被告人に無罪を主張する権利はあり、当然にそれをとがめるものではない。社会は公判の行方と、被告たちの晩節の身の処し方を注視している。