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その2 医師本人の執刀数や成績を教えてくれる

 手術を受ける医師や病院を選ぶ際には、執刀数だけでなく治療成績も判断材料となります。とくに手術に関連した死亡率や合併症率が重要で、その数字が高いほど手術リスクが高いということになり、受けるかどうか慎重な判断が求められることになります。

 そうした成績は、病院のホームページなどに書かれている場合もありますし、執刀医や担当医みずから教えてくれる場合もあるでしょう。ですが、その際に気をつけなければいけないのが、それらのデータが「誰(どこ)のものか」ということです。

 リスクの低い手術であるかのように説明されたとしても、もしかするとそれは論文などに載っている、成績のいい病院を対象に調査して導き出された数字かもしれません。そのような数字で説明されたとしても、それは自分が受けようとする手術のリスクの判断材料にはならないはずです。ですからあくまで、執刀医本人あるいはその病院での手術数や死亡率、合併症率に基づいて、説明してもらうべきなのです。

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 執刀医にとっては言いにくいであろう死亡率や合併症率のようなデリケートな数字を「本当に教えてくれるのか」と思うかもしれません。ですが、私が取材した外科医の多くが、「執刀医本人の成績を教えてもらうべき」と強調していました。つまり、自分の腕に自信のある外科医ほど、自分の成績を包み隠さず患者に伝える覚悟があるのです。

 逆に言うと、医師が本人の経験や成績を教えてくれないのは、自信のなさの表れです。それに、手術のリスクを数字で示さず、「簡単な手術です」「心配しなくて大丈夫」などと、甘い言葉ばかりを言う医師も要注意。その裏には、患者を根拠なく安心させて、自分がしたい手術に誘導しようとする思惑が隠れている可能性もあるからです。

手術のリスクを数字で示さず、「簡単な手術です」と甘い言葉ばかりを言う医師も要注意 ©iStock.com

 執刀医に本人の経験や成績をたずねるのは、患者や家族にとって心理的にとてもハードルの高いことでしょう。ですが、手術を受けるのは生涯に何度もあることではありません。それによって、その後の人生が大きく左右されるわけですから、手術を受ける前にはぜひ勇気を出して、執刀医にたずねてみてください。

 なお、どんな医師も最初から経験があるわけではないので、若手の医師に執刀経験を積んでもらう必要があることも、私たちは理解しておく必要があります。もし若手医師が執刀する場合には、バックアップについてくれる指導医の経験数や成績をたずねて、イザという時のフォロー態勢についても確認しておくといいでしょう。