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 瀬戸は大会や合宿には参加できないが、練習自体は行うことができる。練習拠点の国立スポーツ科学センターも引き続き使用できる。そこには「温情」も感じられると付け加える。

「年内、つまり2カ月半の間トレーニングに集中する時間にすることができます。そこで鍛え直して立て直し、年明けから復帰してほしい、そんな意味合いがあると思います。水泳連盟にとって瀬戸選手は、大切な金メダル有力候補ですから」

 瀬戸は昨年の世界選手権で200mと400mの個人メドレーで2冠に輝き、競泳では1人だけ五輪代表に内定している。他競技を含めても、最も金メダルに近い選手の1人だ。

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表彰台で金メダルの萩野(中央)と笑顔を見せる瀬戸 ©JMPA

水泳界としては丸く収めたい

 ロンドン五輪は選考会で落選、リオ五輪ではライバルの萩野公介に負けて銅メダルに終わった。それだけに競技人生の集大成となる東京五輪への思いは強く、延期が決まった時は「練習にも集中できない」と周囲に漏らすほどだったという。水泳界の空気が厳罰に傾いていないのも、そのことへの同情があるという。

「もともと明るいキャラクターで周りを惹きつける魅力があるし、女性にももてる瀬戸君ですが、今年に入ってからは、飲み会などで『最近、瀬戸選手が遊んでいる』と噂になっていました。五輪延期のショックの反動もあるのかな、と思っていました。ちょっと気の毒なところもあるな、と感じるときはありましたね」(前出・元日本代表選手)

 東京オリンピックの代表内定についても取り消しにはならず、そのまま維持されることになった。そのため来年4月のオリンピック選考会(日本選手権)に向けた調整をする必要はなく、8月の本番に備えればいい。そう考えれば、「この時間がプラスになる可能性さえある」という。

2016年撮影 ©JMPA

 日本水泳連盟の関係者も、瀬戸に厳しい罰則を与えることは本意ではなかった。

「所属先のANAをはじめスポンサーからの処分もあり、連盟としての処分も考えなければいけない状況でした。ただ刑事事件ではありませんし、選手生命を左右するような重い処分を下す性質のものではない。起こしたことについて罰は与えつつ、ただ再起の道は残してあげる、というところです」