1ページ目から読む
2/3ページ目

新聞が真価を見せた「ファクトチェック」 

 毎日新聞はまずWEBでファクトチェックした結果を配信している。まさにWEBこそが真偽不明の言説を利用した主戦場となっているからだろう。ここ最近のファクトチェックを並べてみよう。

「学術会議OBは学士院で死ぬまで年金250万円」 フジ解説委員発言は誤り(10月7日 )

ツイッターで拡散「任命拒否6人、ツールで低評価だから学者と言えない」は誤り(10月10日)

ADVERTISEMENT

「学術会議がレジ袋有料化を提唱」ツイートは不正確 提言はプラごみ削減(10月14日)

桜井よしこ氏「防衛大卒業生は、東大などが大学院受け入れを拒否」は誤り(10月16日)

学術会議、中国との活動「覚書どおりに開催」は誤り(10月17日)

 毎日新聞は、

「誤り」→全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。

「不正確」→正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。

 と説明している。

新聞の本来の姿のひとつがファクトチェック ©文藝春秋

 私は菅首相側の言うままに記者会見ではなく“インタビュー”を受け入れてしまう新聞の姿勢には疑問しかないが、一方で、SNSで声の大きい人がやりたい放題の今、新聞が事実を1つ1つ確認し、淡々とファクトチェック記事を出していく姿はこれぞ本来の姿と思う。

 かつて信濃毎日新聞で主筆を務めた桐生悠々は「言いたい事」と「言わねばならない事」とを区別しなければいけないと書いた(「他山の石」1936年6月5日)。

 新聞読み比べ好きとしてはそれぞれの「言いたい事」を読むのもたまらないのだが、しかし嘘まで言って相手にダメージを与えようとする人もいる今は「言わねばならない事」を新聞にはまずやってほしい。嘘が拡散していたらそれは嘘だと報じてほしい。そこには政権と距離が近いとか遠いとか関係ないはずだ。新聞に残された数少ない義務ではないだろうか。そうした作業を粛々としていくことは見直されるきっかけにもなると思う。