介護サービスの支給量に3倍もの差が
さて、「障害者福祉は全国一律ではないのか」と思われた読者もいるかもしれない。しかしそうではない事は上述した通りだ。
障大連「自治体の財政状況によって障害福祉サービスに格差があるのが現状です。居宅介護等の国の法律に定められた障害者サービスであっても、別の自治体に転居したり首長が交代したりすると、支給量が減らされ生活に困ることが少なくありません」
筆者も地元の農村から大学進学で今の自治体に転居した時、2つの役所から提示された支給量に3倍もの差があり驚いた経験がある。今は月120時間以上介護を受けているが、地元で相談した際は「おそらく月30~40時間くらいしか受けられないだろう」という目安を示されていたのだ。
当時は月40時間の介護でも頑張って大学生活を送るつもりでいたが、仮にそうなっていたら、おそらく半年もしないうちに限界を来たして中退せざるを得なかっただろう。
こうした都市と地方の格差だけでなく、各都道府県内でもばらつきがある。それは上述した財政状況に加え「その地域で生活してきた障害者がどれくらい居るか」といった前例にも左右されるからだ。
都構想実現で、支給水準にばらつきが出る可能性
では、現在の大阪市の24区間での格差は無いのか。
障大連「支給決定は各区の保健福祉センターが行っていますが、区ごとに介護時間数や医療費負担の上限にばらつきが出ないよう、大阪市がある程度責任を持って全体の水準を揃えています。
しかしその役割を担うのが各特別区になると、それぞれの区の財源によって差が出たり引き下げられたりすることが考えられます。自主事業もそうです」
自主事業とは、各自治体が独自の判断と財源で行う政策である。大阪市は特色ある自主事業を行い注目を集めてきた。具体的には、市内在住の障害者が地下鉄(現大阪メトロ)や市営バス(現大阪シティバス)に無料で乗れたり、入院時にヘルパーのサポートを得られたりする制度がある。
可決された場合には様々な影響があるようだが、市の障害者福祉を担当する部署から、それらの見通しについて説明は無いのか。
障大連「ありません。障害福祉の各担当課では『自分たちもどうなるかは分からない。住民投票後に考えていくしかない』と。実際、特別区設置協定書には殆ど具体的な事は書かれてないので、彼らも答えようが無いのでしょう」