大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」の是非を問う住民投票が11月1日に行われる。通常の選挙と違ってテレビCM・ビラ・拡声器等の制限がないため、様々な団体がありとあらゆる手段で賛否を訴え、さながらカオスを煮詰めたような状態だ。
大阪市内では賛成反対両派の街宣車に加え、投票を啓発する「行こう!投“ヒョウ”号」(下の写真)なるアクの強い車両が連日走り回る。全国でも少しずつ取り上げられるようになってきたが、関西のローカルテレビはもっと前から都構想一色と言ってもいい。
そんな中、都構想が実現すると大きな不利益を被るとして、強く反対しているグループがいる。それは、生活支援を必要とする障害者たちだ。
様々な種別の障害者が参加する、大阪府の代表的な障害者団体の一つ、「障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議(障大連)」の古田議長と鳥屋執行委員に、障害者である筆者が話を聞いた。
障大連が都構想に反対する理由
彼らは都構想に反対している。それは何故なのか。
障大連「障害者福祉の水準が下がると考えるからです。私共に限らず、他の障害者団体も同様でしょう。積極的に賛成しているという団体は聞いたことがありません」
その背景には「財源や権限が府に吸い上げられたり特別区間で財政格差が出たりして今の行政サービスが維持できなくなる」という懸念がある。
具体例を挙げよう。筆者は入浴・着替え・歯磨き・料理・爪切り、何一つ独力ではできない。そんな重度障害者が一人暮らしできるのは、ヘルパーによる居宅介護やバリアフリーな市営住宅といった障害者福祉制度のおかげなのだ。
しかし、筆者が生活に必要な支援を受けられているのは幸運に過ぎない。これらは自治体の匙加減が極めて大きい事業だからだ。そういった分野ほど、自治体の財政状況がサービス水準に直結する。
「特別区の財政基盤は今よりも脆弱になる」?
そして「都構想で生まれる特別区の財政基盤は今の大阪市よりも脆弱になる」というのは障害者団体だけでなく反対派の共通認識だ。もちろん推進派の主張通りに今よりも財政が豊かになるなら何の問題も無い。
この争点は極めて政治化されているため公平中立な立場を取るのは難しい。誰一人として党派的なバイアスから自由ではなく、それは筆者も例外ではない。しかし、筆者も協定書の精読はもとより、8年以上大阪府に暮らしながら幅広く情報や意見を収集し、自らの公務員経験や財政学の知識にも照らして熟慮したつもりだ。
その結果「こうした懸念には一定の合理性があり、少なくとも可能性としては十分に考えられる」と判断した。従って、以下ではこの前提に沿って話を進めることをご了承願いたい。