――事務局にはホテルのリストについて問い合わせしたんですか。
山本 もちろんきちんとしたリストをくださいとお願いしました。しかし、いっさい教えてくれない。仕方なく社員総出でJTBのサイトを検索して一つひとつチェックしたのですが、作業が膨大すぎて1週間かけても終わらなかったくらいです。そのせいでシステム構築にかなりの時間とコストを費やすことになりました。
私たちは横のつながりで、ほかの旅行会社と情報を共有しているのですが、彼らが口を揃えて言っていたのは「JTBがホテルのリストを出そうとしない」ということ。こうした大手による情報の独占がGoToトラベルにおける混乱の一番の原因といっていいと思います。
3カ月経っても割引分の給付金が振り込まれない
一方、GoToトラベルによる割引分の給付金が「振り込まれない」と明かすのは、兵庫県芦屋市で海外旅行を中心に取り扱う旅行会社「ブルーム・アンド・グロウ」の代表をつとめる橋本亮一氏だ。
――GoToトラベルは、簡単にいえば旅行代金の割引分を給付金で支援する仕組みですが、その給付金が振り込まれていないんですか。
橋本 はい。7月の割引分は直接旅行者に支払われるのですが、まだ振り込まれていないようです。GoToトラベルは7月22日に始まったので、もう3カ月以上がすぎていますが、旅行会社が立て替えている8月分以降も、少なくともうちには一度も振り込まれていません。
GoToトラベルでキャッシュフローがより悪化した会社も
――どうしてそんなことになっているんでしょうか。旅行業界はコロナ以降、資金繰りが苦しいわけじゃないですか。だからこそGoToトラベルというキャンペーンが開始されたはずです。
橋本 振り込まれない理由はまったくわかりません。好意的に考えれば、急遽始めたキャンペーンだったので事務作業も相当混乱しているのでしょう。なにしろ、事務局への報告書式にしても、エクセルを加工しただけの「これで集計できるの?」というレベルのものですから。
わかっているのは、GoToトラベルによって会社のキャッシュフローがより悪化したということです。なかには、給付金が振り込まれないせいで逆に資金が回らなくなった会社もあるかもしれません。