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安倍首相と会談“インドの田中角栄”モディ首相ってどんな政治家?

「駅のチャイ売り」からの13億人の頂点へ登りつめた

2017/09/14
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SNSをフル活用

 モディ首相を語る際に外せないのが、SNSだ。フェイスブックやツイッターをフル活用して積極的に情報を発信しており、一部では「SNS番長」と称されるほど。実際、モディ首相の各アカウントへのフォローは膨大な数に達している。主要SNSでのフォロワー数は次のとおりだ(2017年8月末時点。千の位を四捨五入)。

【フェイスブック】
→モディ首相4,235万人
 トランプ大統領2,396万人
 プーチン大統領48万人

【ツイッター】
 トランプ大統領3,707万人
→モディ首相3,340万人
 プーチン大統領72万人

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【インスタグラム】
→モディ首相931万人
 トランプ大統領743万人
 プーチン大統領11万人

 ツイッターこそトランプ大統領が就任以降フォロワーを急速に増やしたため上回っているが、それでもモディ首相の3,340万人というのは驚くべき規模だ。フェイスブックやインスタグラムでは、政治家のなかで堂々の首位を維持している。総選挙開票時の「インドは勝利した! 素晴らしき日々が到来するだろう」というツイートは、投稿からわずか1時間で3万5000回以上リツイートされ、その後10万回近くまで数を伸ばした。

 更新も頻繁、というよりもはや日常となっている。2015年の訪米時にはカリフォルニア州のフェイスブック本社まで足を伸ばし、マーク・ザッカーバーグCEOとの会談で「ソーシャルメディアが人生を変えてくれた」と熱い思いを吐露したこともある。

 しかしモディ首相は単なる「SNS好き」ではない。党の選挙運動でもSNSを戦略的に活用しており――インドのフェイスブックユーザー数は2億人を超えている――、若い世代や中間層の支持獲得につなげるなど総選挙での勝利に一役も二役も買ったと言われる。また、各国首脳との間ではスマホで写真を撮って即座にSNSにアップする「セルフィー(自撮り)外交」も展開されている。

 SNSだけでは満足できなかったのか、2015年6月には専用アプリ「Narendra Modi」までリリースした。英語やヒンディー語をはじめ、ベンガル語やタミル語など10の言語に対応。日々の首相動静や政府の成果を図表で紹介するセクション、毎週行っているラジオ番組のストリーミング放送や演説の動画、さらにはクイズコーナーなど、機能の充実ぶりには目を見張るものがある。

 モディ首相はかつてデリー大学での講演で「われわれは『ヘビ使い』ではない、いまや(コンピューターの)『マウス使い』なのだ」と言って「ITの国インド」をアピールし、学生から大喝采を浴びたというエピソードがある。時代は「マウス使い」からさらに進みインドでも「スマホ使い」が急増しつつあり、政権も「デジタル・インディア」というICT振興策を掲げているなかで、モディ自身が急激な変化を体現する存在となっている。

日本とモディと新幹線

 2015年12月にも、安倍首相のインド訪問が行われた。日印間には両国の首相が毎年交互に相手国を訪問するという取り決めがあるので訪問そのものは恒例行事だが、このときは大きな目玉があった――インド高速鉄道建設計画で新幹線方式の採用が発表されたのである。

 対象になるのは、モディ首相のお膝元アーメダバードから商都ムンバイまでの約500キロを結ぶ、経済的にも重要な路線だ。2017年に着工し、23年の運用開始というスケジュールが立てられている。

 受注に成功したのは新幹線技術への高い評価や資金調達面での優遇措置といった「実利」があってのことだが、「蜜月期」にあると言われる良好な日印関係なくしては容易ではなかっただろう。日本側の対インド関係強化に対し、モディ首相も対日重視姿勢を見せており、首相就任後、二国間ベースかつ近隣国以外で初めて訪れたのは日本だった。

 ただし、話はこれで終わりではない。インドではデリー〜ムンバイ間、デリー〜コルカタ間など主要都市を高速鉄道で結ぶ計画が他にも複数あり、中国勢や欧州勢が受注を狙っている。今年6月、印中国境付近で両国軍が対峙する事案が発生したことでインドの対中警戒感が再燃したが、経済面では不可欠のパートナーであることに変わりはない。一国への過度な依存に慎重な戦略文化を持つインドだけに、バランスを重視して他の路線は欧州勢を選定する可能性もある。日本としては、まずはアーメダバード〜ムンバイ線を成功させ新幹線の優秀さを実感してもらうことで「次」につなげたいところだ。

2016年には安倍首相と神戸の新幹線工場を見学した ©getty
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