“男臭さ”に“かわいさ”まで併せ持つキャラクター
さらに、線の細い若手の男性俳優の中で、坊主に太眉、大きな顔に大きな声といった特徴をもつ岡部は、ある種の“男臭さ”を感じさせる。印象的だったのは、『私の家政夫ナギサさん』で岡部のワイシャツの下からしばしば肌着が透けて見えていたところだ。体臭を感じさせるその佇まい。
そういえば、『エール』で青年の弟子入りを拒み続けた主人公を最終的に根負けさせたのも、何日も野宿を続けたことによる青年のひどい体臭だった。それが視聴者に不快感をもたらさないのも、岡部が併せ持つ“かわいさ”ゆえだろう。
確かな演技力と、テレビの若手俳優にあまりいない“男臭さ”を感じさせる容貌、さらに“かわいさ”まで併せ持つ希少なキャラクター。芸人のドラマ出演はもはや珍しくないが、青年役ができる岡部には競合も少ない。そんな彼はもはや、「演技もできる芸人」という枠にとどまらず、「同年代で代わりがいない役者」ともいえるのではないか。
全身タイツを着て演技力を見せつけた「犬」のコント
岡部がドラマで見せる確かな表現力。それを培ったのは他でもない、コントだ。
彼はもともと漫才師だった。しかし、コントへの熱が高まりコンビを解散。秋山と菊田のコンビに岡部が加わる形でハナコが結成された。彼がコントを演じる際に参考にしているのは、演技派の芸人として知られ大河ドラマをはじめとする大作への出演も多い、劇団ひとりと東京03の角田晃広だという。
「コントする前に1回、ひとりさんだったらどう演じるかなとか、角田さんだったらどう演じるかなとか、1回イメージしてそれを参考にしてやってる」(『ゴッドタン』テレビ東京系、2019年5月25日)
ハナコが世間に名を知らしめた2018年の『キングオブコント』。そこで見せた「犬」のコントは、まさに彼の演技力を見せつけるものだった。全身タイツを着て部屋でくつろぐ岡部。唐突に何かを嗅ぎつけたように立ち上がり、玄関の前で「来る来る来る来る!」と連呼する。秋山が玄関を開けて帰ってくると、岡部は「よっしゃーご主人!」と興奮する。「吠えないよ」と秋山は制する。
たったこれだけのやりとり。しかし、岡部の表現力に導かれ、見ている者は察する。タイツを着た男は言葉を喋り2本足で立っているが、これは犬を擬人化しているのだ、と。